今回の石川県の旅は台風一過。眩しいばかりの夏の太陽に恵まれました。過去2回、天候不良で伺えなかったお店にもやっと訪問でき素敵な滞在となりました。

 

 

金沢市にあるモダンスパニッシュ『respiration(レスピラシオン)』へ。近江市場からほど近い博労町というエリアにあるレストランです。築140年という時を刻んできた町屋がそのステージ。

 

 

「ミシュランガイド北陸2021特別編」で2ツ星を獲得されています。その他ゴ・エ・ミヨや食べログアワードなど表彰多数。北陸を代表するレストランです。

 

 

エントランスを入り、蔵のある空間へ。

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「respiracion」とはスペイン語で呼吸を意味します。エントランスを入った瞬間から外の景色とは遮断され、そこには蔵が呼吸するようなリズムがありました。昔の人々がその叡智で物を保管するように作った蔵は、食料を保存できる構造で作られているため、蔵事態が呼吸しているはず。建物自体から感じる静かな呼吸。包み込まれるような、空間に誘われます。ウエイティングスペースのほとんどをしめる金沢の地形を型にした大きなテーブルはそれ自体が空間を象徴する存在感があり、食事までの時間、こちらでの時間は呼吸を整え、金沢の景色、土壌、生産者、そして料理を作る人々が共にしている呼吸のリズムに次第に同調していきます。今回はそんな共鳴を感じるお時間を愉しませていただきました。

 

 

茶事のおもてなしを取り入れているのでしょうか。まずはティーサービス。

加賀棒茶とアッサムのブレンドという金沢の文化とも言える加賀棒茶をただそれだけでなく、より風味の広がるブレンドが体に浸透していきます。

 

 

ウエイティングスペースから移動し、メインダイニングへ。オープンカウンターで料理をする3人からは気迫さえ感じます。集中力の高いお料理。コースは1種類、22,000円のみです。

 

 

今回は紅茶でお料理を楽しませていただきました。オキナワティーファクトリーのサンセットとアンバーです。レスピラシオンのお料理は、驚く程サンセットがよく合いました。

 

 

インパクト甘海老

まずはオープン以来作り続けているという石川を感じるスペシャリテから。名刺代わりとでも言ったらいいのでしょうか。このお料理だけ唯一メッセージが添えてあります。それだけ思い入れの強い料理なのではないでしょうか。

 

まずは甘海老を分解し身の部分は麹づけでマリネ。味噌でシートを作り、殻は乾燥させタルトにし組み立てます。海老の甘味が口の中に広がり、夏の間だけ使うというライムの酸味が弾けます。最後は香ばしい海老の味わいが余韻長く続く逸品。幾重にも余韻を作り出すお料理も特徴的な印象・・・”インパクト”を感じました。

 

 

岩牡蠣

2020年、半世紀ぶりに岩がきが復活した、志賀町の高浜漁港沖合のヨコタ礁で素潜りでとった最高級との呼び声高い岩がきを使い、ホエーと新玉ねぎを合わせたソースで包んで上には木の芽のアクセント。実山椒のオイルをかけて仕上げています。

 

 

牡蠣自体は全く雑味がなくクリーミー。玉ねぎの甘さやを加え、オリーブオイルやホエーで滑らかな口あたりに。山椒とエクストラバージンオイルのフレッシュな味わいが広がります。

 

 

トマトで作ったガスパチョに能登あんがとう農園のフレッシュハーブを加えています。

 

仕上げに澳オリーブで青い香りを♪フレッシュな味わいが絶妙なガスパチョでした。

 

ビーツ

スペイン産のサラミの上には、ビーツの葉っぱと生ハムで巻いてスチームにした黄色ビーツ。ほっこり甘い味わいに生ハムでコクを加えています。上には、レモンの皮のコンフィを乗せ、酸味もプラス。バニラのオイルでニュアンスを添えたお料理でした。

 

 

トマト

静岡県の完熟トマトとオズミツクトマトという2種のトマトを使い、パンコントマテを作っています。甘いトマトの味わいとニンニクの風味が漂う小さなスナック。

 

 

パンに合わせたのは、アウボカーサ エキストラ・バージン・オリーブオイル

 

ノーベル賞受賞晩餐会で使用されているオイルです。イタリアで最も権威のある

オリーブオイル品評会“SOL 2012年”に於いて「金賞」を受賞しています。

 

とうもろこしのピュレにたっぷり注いでいただきました。

 

加賀のうどん粉と能登島の塩を使って作った自家製パンが熱々で登場しました。

しっかりした存在感のある味わいながら、料理を邪魔しない美味しさ。

とうもろこしのピュレをつけていただきました♪

 

 

まはた / カリフラワー

10日間ほど熟成させたまはたを、低温のオイルで火入れしバスク地方の郷土料理ピルピルで旨味を閉じ込めています。ソースは乳化させ柔らかなテクスチャーのカリフラワーソースを纏わせています。仕上げは炭化させた柚子を目の前ですりおりし、爽やかな味わいも。聞けばお魚は予約に合わせ複数熟成させていて、その日一番いい状態のものを選んで使っているとか。きっとお客様の顔を思い浮かべながら、選んでいるんだと思います。料理人として美味しいものを作るという熱意とともに、同時にゲストを思って作った愛あふれるお料理。

 

 

七面鳥

茄子嫌いの私が克服できそうな勢いで美味しいと感じたお料理。阿岸の七面鳥で取った出汁は甘味がしっかりしていて、炭火で焼きされ糖度が一般的な茄子の2倍もあるというきよし農園のへた紫茄子を煮浸しに。炭火で焼いた風味と、なすの甘い味わいのバランスがよく、旨味のしっかりした七面鳥のスープが味わいを下支えし、滋味深い。炭の香りでより一層添えてあるハツの甘さの余韻が続く、調和の取れたお料理でした。

 

 

甘鯛

七尾湾で獲れた甘鯛を1週間ほど熟成させ旨味を閉じ込め焼いています。抜群の火入れで、力強い味わいととろける口当たり。上には焦がしバターをかけたのでしょうか。バター香るバイ貝で甘鯛とは違う旨味が広がります。マッシュルームやもろへいやや、ほうれん草、などの青い野菜が違う食感で添えられていて食べ飽きないお料理。

 

 

カタルーニャ地方の郷土料理であるカネロネスを能登の猪を使い作っています。パスタ生地で巻いた猪と七面鳥のレバーを、言い方か悪いですがコンビーフのようにし(あくまでも見た目ね)、巻いています。お肉の臭みを消す作用もあるんでしょうけど、お肉の旨味をさらに感じるような程よいスパイス感。そしてスペインといえば、マンチェゴチーズですが、こちらも仕込みさらに風味豊かなコクを添えて。最後はシェリー酒をスプレーでかけて仕上げています。アーモンドの味わいも楽しい。添えられた旬つるむらさきで巻いた茶豆のデュクセルには、きのこやレモンタイムやそのお花が添えられ、口に入れると中から茶豆の味わいが際立ちこれ自体がとても美味しい。しかもこんな小さいのにカネロネスとの量のバランスも素晴らしい抜群なお料理でした。

 

 

猪とベシャメルソースのお料理の後ということで、シェリビネガーとトマト液でマリネしたトマトが口なおしに。一口で頬張ると新生姜の香りが広がり口の中がスッキリ。

 

 

蝦夷鹿/野沢牛蒡

メインは雌の蝦夷鹿の背肉のグリル。鹿肉独自のしっとりしたお肉は、最後にスペイン産の塩をちりばめ、お肉の味をグッと引き立て、お肉はシルキーで、口の中でとろけるかのように滑らかに仕上げています。野菜の端材で作った赤ワインソースは、野沢牛蒡も入れ、幾重にも旨味の層を作り上げる奥行きのある味わいに。サスティナブルなメッセージも隠されていますね。添えられているのは、キンジソウといちじく。

 

このしっとりした焼き上がりはお見事。

 

 

毛蟹

カタルーニャ風のパエリアで〆。今回は毛蟹で作ってくださいました。

 

濃厚、いや超濃厚な味付けで炊き上げられたパエリアは旨味の宝庫。毛蟹の身を添えることでバランスを取り、リッチなご飯と贅沢に添えられた毛蟹と、この3口ほどのお米料理でしたが、しっかり満足感が感じられる印象的なシメ。

 

 

アロスカルドソ

もう一品お米料理は、河北潟で獲ったすっぽんで炊いたスペイン風雑炊"アロスカルドソ”。辛味の強い新生姜を添え、すっぽんとのバランスもしっかり。爽快感が広がります。

 

 

メロン/抹茶/バジル

メロンのジュースにはババロワと凍ったメロンの果肉、そして抹茶のソースを合わせています。甘いだけでなく、香りを合わせたデザート。時折氷で冷えたミントをちりばめて。

 

デコポン/ジン

デコポンにスペイン産のクラフトジンを合わせたものに、柑橘やハーブを練り込んだミルクのシートをかけて作ったミルキーなデザート。同じミカン科のキハダで作ったアイスクリームを仕込、柑橘類をクリーミーにたべさせてくれました。

 

食後はフレッシュハーブティー。

 

使用されるハーブをトレイに乗せ見せてくれたり、あふれんばかりにポットに入れてくれたハーブは、注ぐ時の視覚的なプレゼンテーションはもちろん、香りも豊かでした。

 

小菓子も最後の最後まで抜かりないプレゼンテーションが続きます。

マンゴーを包んだクレープ♪

 

すももをバラの花のようらに見立てたバラ香るお菓子。

 

こちらはコーヒーゼリーのパイ。

 

最後は「ようこそ」という文字の入ったチョコレート。金沢では、帰り際に「ようこそ」と挨拶する独自の風習があるとか。そんな文化をチョコレートに込めていました。

 

 

ホームページには以下のようなことが書いてありました。

 

僕たちが皆様にとって呼吸のような存在になりたい。
山、海、生産者、そして僕たち。
そのすべての呼吸を合わせて創る時間を皆様に
感じてもらえますように...

 

レスピラシオンでは、スペイン・バルセロナで修業した、梅 達郎氏、八木 恵介氏、そして梅氏と幼馴染の北川 悠介氏が三位一体となり、無駄のない凝縮感のある料理を作りだし、再度息吹を吹き込まれ古民家という空間にて、ホールではソムリエの金村 俊宏氏の行き届いたサービスと洗練された温かな接客で、私たちはその時間を楽しむことができます。

 

茶道では亭主と客人の心が通い合い、気持ちいい空間が生まれることを「一座建立」といいますが、そこで重要となるのが呼吸、「respiracion」です。亭主は集中し茶を点て、そこに聞こえる呼吸に同調し素晴らしい空気が調和するのですが、ここでの時間は、まさに一座建立のような凛々しさを感じるものでした。またそんな時間を楽しませていただきたいと思います。

 

 

 

respiracion(レスピラシオン)

石川県金沢市博労町67

076 - 225 - 8681

月曜日を中心に月6回

Lunch12:00 all start  12時一斉スタート|ドアオープン 11:30

Dinner18:00 all start  18時一斉スタート|ドアオープン 17:30