むかし むかし 魔法使いとその娘が、たった二人きりで暮らしていました、
娘には名前はなく、ただ、「むすめ」と呼ばれていました。時おり、名前で呼ばれていた幼いころの夢をみることがありましたが、どうしても名前を思い出すことが出来ません。
そこで娘は、自分が何者なのかを父の魔法使いに尋ねるのでしたが‥…。
(アントニア・バーバー 文 エロール・ル・カイン 絵 中川千尋 訳)
この絵本は私の大好きな絵本です。
そしてこの絵本に出会って「朗読セラピスト」になろうと決心がついたのです。
あらすじ
魔法使いは魔術師や占い師の書き残した本を読み その魔術を自分のものにする事に一生をついやし 術を思うままに使えるようになりました。
ただ最後の神秘である「永遠の若さ」だけはまだ手にいれることができていなかったのです。
娘は父である魔法使いと二人だけで生活していましたので、外の世界も知らず、そして又自分の美しさも知らずに育ちました。
ある時 娘は 本を読むことを父にゆるされました。
だから娘はそのたくさんの本から 人には名前があり、母という存在や兄妹や友人がいることを知ります。そしてこの世には幸せ 悲しみ 苦しみ 勇気 希望や絶望 友情 愛
といったものがあることをしるのです。
遠い記憶が娘を動かします‥自分は誰なのだろう?
本を読んだ事でいろんな智恵がついた娘を魔法使いは、小鳥の姿に変えてしまいます。
逃げ出さないように。
実は娘は 小さい時に 魔法使いが母のもとから娘を連去っていたのでした。
小鳥の姿に変えられても 娘は、ただひたすら まだ見ぬ 母という人のもとへ旅経つのです。でも小さな翼は力つき やわらかな雪の上に投げ出されたとたん 魔法は解けます。
そして‥‥。
画家ル・カインの絵は本当に美しい!この絵を額に入れて飾っておきたいくらい美しい!
この絵本のあとがきにはこう書いてあります。
絵として見ると、多国籍的なモチーフはもちろん、様々な画風が混在している事が目につきますが、自身 西洋と東洋の精神風土を受けづいたル・カインが晩年に残した作品であることを考えると感慨深いものがあります。
魔法使いの娘と聞くと 西洋のお姫様を想像しますが、朗読が終わりこの絵を見た時の
いい意味でのギャプも忘れられません。
物質的なものは山ほどある生活でも、真実の愛は物ではない。
心はお金では買えない。目に見えないものの大切さを感じる絵本です。
「魔法使いはたしかにありあまるほどの物をくれました。けれども愛と自由だけは与えてくれなかったのです。私は今この二つを手に入れました。どれほどの宝であろうと自由に変えられる物はなく、愛より強い力はありません、私はお母様の娘ではありませんか
お母様と同じように働き、同じようにつましく暮らします。どうか、ここに置いてやると
仰ってください」
そしてこの絵本は みごとなほどの日本語の美しい翻訳だと思いました。
読んでると 心が落ち着きます。
朗読は音声表現だけで、絵は見ません。
この絵本の言葉の美しさとお話の内容の素晴らしさを朗読で聴くと 心の中に化粧水のようにしみ込みます。
本当に不思議な絵本です。
