生活の中心が、相変わらず、ゲームなのだということが、伺える二宮の家だった。
(あとは、たまにギターをやるくらい?)
見覚えのあるギターが、壁に立てかけてある。
「相葉さん、適当に座って?」
二宮に促され、ソファーに腰掛ける。
「今日、相葉さんを呼んだのはさ…」
二宮は、飲み物と軽い食べ物を用意しながら、さっそく、本題に入った。
「今度、ユニットすることになったじゃない?事務所の会議室じゃ、なかなか、アイデアも浮かんでこないかなぁ、って思って…」
「…確かに…だね?」相葉は相槌を打つ。
「…こないだ、たまたま、ネットで面白いもの見つけて…相葉さんにも見せたかったし…」
「へぇぇぇぇ?!なになになに?!」
相葉の喰いつきの良さに、気を良くした二宮は、いそいそとPCを立ち上げる。相葉が二宮の背後から、PCを覗き込む。
相葉の顔が二宮の顔に近づく。
二宮の胸が高鳴る。
「近い、顔!」
二宮は、咄嗟に相葉の顔を、手で引き離す。
「わりぃ、わりぃ」
相葉は、素直に謝りながら、二宮から離れた。
二宮は平静を装う。
「相葉さん!ほら、これこれ、面白くない?」
PCの画面には RubberLegz & James Greggの動画。
「いいね!ニノ!これやりたい!俺たちコレやろうッ!」
相葉は即決した。
そして、
「実は…。俺も、いろいろ、考えたんだけれど…」
相葉は、少し照れくさそうに、話し始めた。
「俺たち、ジュニアの頃からずっと一緒じゃない?…で、これが最後のアルバムで、…最後のライブになるかもしれない…だから、俺たち二人の歩んできた道のり、というか…関係性というか…を、歌と踊りで表現出来れば…と思ってたの…俺たちらしいカタチで…。だから、これッ!ちょうどいいと思う!」
相葉は、PCに映し出されたコンテンポラリーダンスの画像を指差した。
「フフフ…熱すぎるよ、相葉さん」
二宮は笑いながら答えた。
でも、すぐに、その笑みは消えた。
そして、相葉に問いかけた。
「相葉さんのいう‘俺たちの関係性’っていったいなに?」
(…何だかんだいっても、結局、あなたは、翔くんなんじゃない…)
「…それは…うーん………なんだろう………俺たちのことをうまく言い表す言葉が浮かんで来ない…………んー……………ッてかさぁ、必要ッ?!……俺たちの関係性に、なんか言葉って必要?」
「なんで、最後、半ギレるんだよ?」
「…だってさ…俺たちは、俺たちであって、それ以上でもそれ以下でもなくって……………あッ、そうだ。ユニットバスッ!!!!!」
突拍子もない相葉の言葉に、
二宮の頭の中は
「?????」
そんな二宮に構わず、相葉は言い続けた。
「トイレとバスタブが一緒になってるタイプあるじゃん。ホテルってたいがいあのタイプだよね。あれ、はじめて見たときびっくりしたぁ。なんで、便所と風呂、一緒になってんの?って。ハハハ。」
「???相葉さん、いったいなんの話???」
「だから、俺たちは、そのユニットバスの、便所と風呂みたいな関係ということ。なんか、一緒にいて………当たり前なような、当たり前でないような………」
相葉の、普通では到底思い浮かばない発想に、二宮は、呆然とした。
(よりに寄って、俺たちの関係性を便所と風呂って…もっと、こう、なんか綺麗な例えはないのかよッ?!)
「…なんか、松潤が、ユニットって口にしたときから、なんか、ユニットバスが離れなくって…」
(やっぱり、相葉さんって、馬鹿だ)
「…いいんじゃない?」
(でも、そういうところが…)
「えっ?」
「それでいいんじゃない?それ、タイトルでいいんじゃない?」
「えええええ?!本当に、いいのぉ?」
思いがけない二宮の反応に、驚きを隠せない相葉だった。
「面白いって思うよ」
(そう。その方が俺たちらしい)
冷静に二宮は応えた。
「ちなみに、便所は相葉さんね」
「えええええッ?!」
いつも一緒につるんでいた頃に、
戻ったかのようだった。
To be continued