櫻井と松本の飲み会は、
結局、櫻井の行きつけの高級蕎麦屋になった。

「へぇ〜、感じのいい店じゃない」
どうやら、松本のお気に召したらしい。

櫻井は、ホッと胸を撫で下ろした。

あとは、肝心の味、である。

松本が、ここ最近蕎麦にはまっていることは知っている。

「ん〜ッ!美味しいッ!」
松本は、満面の笑みを浮かべた。

「良かったぁ〜…松潤は、味にうるさいから、お気に召すか、マジ、冷や冷やだった」
櫻井は、全身の力が抜けるようだった。

「俺、翔くんに、そんなに気を使わせてた?」
松本は、申し訳なさそうな表情を浮かべながらも、どこか嬉しそうだった。


「使わせてた、使わせてた!…いや、違う、俺が勝手に使ってた。松潤に、美味しいもん食べさせたくって」

「…ありがとう」
松本は、照れ臭そうにお礼をいった。

櫻井は、昔から、人がキュンとするようなことを、照れもせずに、さらりといってのけるところがある。

(そういうところが…)

松本は、嵐結成の前後、櫻井のことを好きで好きで仕方なかった頃のことを思い出していた。

好きになり始めの頃は、ただただ、幸せだった。だが、それは、すぐに苦しみに変わっていった。独占欲や嫉妬心、依存心に支配され、まだまだ幼い松本は、感情に突き動かされるまま、ところ構わず、なりふり構わず、櫻井を振り回した。

最初の頃は
「お前マジうぜー」
なーんて言いながらも、嬉しそうな櫻井だったが、日増しにエスカレートしていく松本の言動に、手が負えなくなり、ある日ついに、松本を冷たく突き離してしまった。

松本の心は、木っ端微塵に崩れ去り、それ以降、櫻井と松本の関係は、ファンの間でも周知の『氷河期』に入っていった。

(こうして、翔くんと、普通に、サシで飲む日が来るなんて…)
と、松本は、感慨深く思った。

「いやぁ、松潤と、こうして、サシで飲む日が来るなんて…」
と櫻井は、しみじみと語った。

「フフフ…今、俺も、翔くんとおんなじこと考えてた」
松本は、思わず笑って言った。
櫻井は嬉しくなり、
「イエーイ」
と言いながら、松本とハイタッチすべく右手を挙げ、松本もそれに応じた。

和やかな雰囲気のなか、
松本は、本題に入った。

「翔くんと俺、今回、ユニット組むことになったじゃない?…で、まぁ、せっかくだから、美味しい酒でも飲みながら、どんな風にするか、お互いに、思ってること、気軽に出し合えたらなぁ…って思って」

櫻井は、
うん、うんとうなづいた。

「…なんか、翔くん、イメージある?」
松本の問いかけに、
櫻井は、うーんと考え込みながら、
「…そうだなぁ…。大野智、相葉雅紀とのユニットは、どうやら、おふざけ路線で決まりそうだから、松潤とは……なんか…カッコいい感じで攻めたい!…かなぁ…」と応えた。
松本は、櫻井と、方向性が一致していることが確認出来、安堵した。

「松潤は?」
櫻井に問われた松本は、ニヤリと笑いながら言った。

「俺はねぇ……、
    翔くんとバトりたい」


                              To be continued