『流れ星の冬』(1994年)の主人公・葉山は、戦後の混乱期に荒稼ぎした強盗グループ“流星団”の一員でした。
宝石商や高利貸、密輸で儲けた酒屋などをターゲットにし、相手の用心棒などと鉢合わせした時のために、メンバーの志木と塚本はトンプソンのサブマシンガンで武装していました。
1921年、初の市販品となる「M1921」を発表。自社工場を持たないオート・オードナンス・コーポレーションは、M1921の量産をコルト社に委託します。
しかし大戦後ということもあり、軍には一部の部隊に導入されたのみで、正式採用には至りませんでした。
頑丈でトラブルが少なく、現代のサブマシンガンに比べれば重いですが(重量約4.9Kg)、1人でも携帯可能なこの銃を有名にしたのは“シカゴマフィア”でした。
対抗するかのようにFBIもM1921を導入。禁酒法時代(1920〜1933年)には、警察とマフィアの双方がトンプソンサブマシンガンを使用していたことが、マシンガン=トンプソンというイメージが定着させます。
その後はさまざまな派生モデルが誕生。
「M1927」
フルオート機能を廃止し、セミオートオンリーにしたもの。同時期に100連ドラムマガジンも販売も始めました。
「M1928」
フルオート時の反動で銃をコントロールできずに誤射を生むことが無いよう、1,200発/分の連射能力を600発まで落としたもの。アメリカ海軍、イギリス、フランス、スウェーデン軍に導入されました。
また、箱型弾倉を標準装備とした「M1928A1」はアメリカ陸軍に導入され、第二次世界大戦で使用されました。
M1/M1A1モデルはアメリカ軍に180万丁納入されましたが、1944年納入分を最後に終了します。
日本では第二次世界大戦前の1930年頃からトンプソンサブマシンガンが海軍で使用されていて、対戦時は陸軍も使用していました。
終戦後にはアメリカから警察予備隊や保安隊、自衛隊に支給され、自衛隊では年々数は減ったものの、1990年代まで使用されていたといいます。
『流れ星の冬』の流星団が使用したモデルは、その支給品が闇市場に流れたものではないかと思います。
オート・オードナンス・コーポレーションは、対戦末期にライバル会社に買収されてさしまい、トンプソンサブマシンガンの製造権はさまざまな企業や投資家の間を渡り歩くことになります。
1970年にようやくオート・オードナンス・コーポレーションが復活。FBIなどへの官給品や民間用セミオートモデルの製造が再開されます。
FBIの正式拳銃の変更に伴い、使用弾を.45ACPから10mmオート弾や.40S&W弾用に仕様変更しましたが、その製造は現在も続いています。