大沢作品でおそらく最長編、ページ数だけでなくスケールも最大規模である『欧州純白-ユーラシアホワイト-』(2009年)



中国からアメリカに密輸されるヘロイン“チャイナホワイト” 

その重要中継拠点である香港が、中国への返還を目前に控えていた1997年。


登場するのは、CIA、マフィア、蛇頭、広域暴力団という、大沢オールスターズ(笑)


迎え撃つ主人公は、日本・アメリカ・中国の捜査官3人。

アメリカ連邦司法省麻薬取締局(DEA)のベリコフ。

日本の厚生省麻薬取締官の三崎。

中国上海市公安局・刑事警察機構の趙(チャオ)



ストーリーはグアム島から始まります。

チャイナホワイトの密輸中継点であるグアムの売人が爆殺される事件が発生。

ニューヨーク・シチリアマフィアのパラッツオは、新たな密輸ルート開拓のためにロシアへ向かい、そのパラッツオを追ってロシアへとぶ、ベリコフ。


日本の三崎は潜入捜査中に上海マフィアに撃たれて重症を負いますが、地下銀行を経営する台湾人・徐(シュイ)に助けられます。

三崎は徐から、“ホワイトタイガー”という謎の人物が日本最大の暴力団・坂本組と手を組み、アメリカへのヘロイン密輸の中継点を日本に置こうとしていることを知り、坂本組とホワイトタイガーの仲介人である徐と行動を共にします。


そしてベリコフと三崎の前に現れる、謎の中国人・趙。彼もまたホワイトタイガーの情報を求めていました。



物語前半はそれぞれがお互いの存在を知らぬまま捜査を行っていますが、ホワイトタイガーがチャイナホワイトだけでなく、ロシアやゴールデントライアングルのヘロインの流通も一手に握る、“ユーラシアホワイト”の野望を持っていることを知り。3人は国も人種もセクションも越えて、ホワイトタイガーとユーラシアホワイトを叩き潰すために団結します。



この展開は、本来敵同士である“逃がし屋グループ”と警察が協力し合う『闇先案内人』(2001年)を思い出しますが、いわゆる熱い友情モノという感じではなく、事件解決後にお互いを称えたり、思い出に浸るアウトロのような行はありません。


しかし、己の職務に対するプライドや使命感、愛国心(国家ではなく、母国の土地や人への想い)を持った者たちが、ひとつの目的に向かって協力して戦う姿は、やはり友情と呼ぶべきか…



その戦いは、情報戦・囮捜査・陽動作戦・心理戦と、大沢作品の面白さの全てが導入され、舞台は東京だけでなく、ウラジオストックや沖縄でも展開されます。


他の作品が日本映画なら、『欧州純白』はハリウッドの大作クラス。

各国のスター俳優の共演で映像化できないものかと思ってしまいます。


登場人物が多く、前半はややもたつく展開もありますが、後半はホワイトタイガーの正体を暴く展開も含めて一気読み必至の一作です。