『ダブル・トラップ』(1981年)

主人公の加賀が所属する諜報機関・松宮貿易を狙う新組織の人間が使用したり、『闇先案内人』(2002年)では暴力団・柳井組の組員が使用していたサブマシンガン。



アメリカ、ミリタリー・アーマメント・コーポレーション製。

全長296mm(ストックを伸ばすと548mm)、重量2,850g。

9×19mm パラベラム弾と.45ACP弾を使用するタイプがあり、9×19mm弾仕様は装弾数32発、.45ACP弾仕様は30発/40発。



1964年、米アーキアーガ・アームズ社の銃器設計者ゴードン・イングラムは、第三世界(冷戦時代に東側にも西側にも属さない国々)向けのサブマシンガンとして“M10”を設計しましたが、当時はどの国からも採用されることはありませんでした。


1969年、イングラムは銃器サプレッサー(消音器)メーカーのSIONICS社に移籍。

同社オーナーのミッチェル・ウェーベル三世は、M10にサプレッサーを装着することを提案。改良されたM10にサプレッサーを装着し.45ACP弾を使用するモデルが制作され、アメリカ軍に特殊部隊用として採用されます。




(サプレッサーを装着したM10。写真はウィキペディアより)


イングラムとウェーベルが、1970年にMilitary Armamemt Corporationを設立。

M10は社名の頭文字をとって「MAC10」または「イングラムMAC10」と呼ばれるようになります。


同じ頃、.380ACP弾を使用するM11(MAC11)が誕生。これはMAC10と外観や内部構造をそのままに、全長を248mm、重量を1,590gまでに小型化したもので、弾丸が小さくなったぶん消音効果も高くなっています。


大沢さんの作品では「イングラム」としか表記されていないので、“ビッグマック”のMAC10かMAC11かは不明です。


ハンドガンのコルトM1911A1(上)とMAC11。全長はほとんど変わりません(写真はモデルガン)

作動方式はオープンボルト方式のシンプルブローバック。小型でボルトストロークが短いぶん速射性能は高く、MAC10は1,090発/分、MAC11は1,200発/分。


一点に集中的に弾丸を打ち込む能力は優れていますが、小型のためフルオート時は銃本体が暴れ馬状態になり、遠方やピンポイントの攻撃には向いていません。


MAC10の導入は、前述のアメリカ軍だけでなく、ブラジル軍やフィリピン軍、アメリカの警察にもありましたが、安全性や命中率の高さを誇るMP5には及ばなかったようです。

 


1975年にMAC社が倒産。その後MAC10/11の製造権は何社かを渡り歩きましたが、現在はSWD社やコブライ社がコピー品やバリエーション品の製造を続けています。