『冬の保安官』(1997年)収録の短編『ローズ』の主人公であるローズは、近未来の歓楽惑星・カナンにある巨大ホテルの探偵。

ローズの武器は2連発の光線銃で、五百年以上前に地球のアメリカで使われていた火薬撃発式銃に似ていることからデリンジャーと呼ばれていました。


ローズの銃は、レミントン・モデル95 ・ダブルデリンジャーがモデルのようです。

(レミントン・ダブルデリンジャー。写真は全てウィキペディアより)

アメリカ、レミントン・アームズ社製。
41ショート弾を使用し、装弾数は2発。
全長12.38cm、重量312gと、女性の手のひらにも隠れそうなコンパクトガン。


デリンジャーの元祖は、アメリカのガンスミスであるヘンリー・デリンジャーが1825年に発表した44口径単発式銃。

(ヘンリー・デリンジャーピストル)

この銃はアメリカのリンカーン大統領暗殺に使用されたことで有名になりましたが、ヘンリー・デリンジャーが商標登録などにうるさくなかったことから、銃器メーカー数社が同様の銃を開発。
“デリンジャー”の名は、ポケットサイズピストルの代名詞として使われるようになりました。

ヘンリー・デリンジャーが製作した銃は、メーカーの所在地から“フィラデルフィア・デリンジャー”と呼ばれ、他にもコルト社やハイ・スタンダード社がポケットピストルを製造。

その中で最もポピュラーなモデルとなったのが、前述のレミントン・ダブルデリンジャーというわけです。

レミントン・ダブルデリンジャーは弾倉が無く、上下2連の中折れ式シングルアクション。

銃爪は1つで、撃発機構のラチェットが上下の弾丸を自動で選択するため、意図的に上下の弾丸を撃ち分けることはできず、弾丸を片方にしか入れていない場合は、初弾または2発目が空撃ちになります。

この銃は1866年から1935年の間製造されていましたが、携帯に便利なことはもちろん、シンプルな構造は扱いやすく故障が少ない上に、個性的で流麗なデザインは現在でも人気のあるモデルとなっています。

なお、レミントン社はヘンリー・デリンジャーの死後に遺族との商標を巡る訴訟を避けるため、ヘンリーの「deringer」という表記に対し、「r」が1つ多い「derringer」と表記していました。