最近の農業関連のニュースでは、若手農家が企業とタッグを組んでITを駆使して省力化し、なおかつ高品質な農産物を生産できる大型施設園芸を開始したなど派手なものが目立ちます。
農業の明るい部分が農業外に伝わるのは良いことです。
いつかは俺も、私も!という気持ちを持つのは大切だと思いますが新規就農時は地味なスタートでもまったく問題ないと思います。
鈴盛農園も新規就農から6年半が経ちますが未だに地味にやっていますよ。
まず、農業をやってみたいと思ったら、
どこで農業をやりたいのか、
なにがつくりたいのか、
どのような方法で栽培、販売していくのか、
とりあえずこれくらいは決めておかないと話になりません。
就農相談窓口などに行って「いや、何も決めてないんですけどなんとなく農業に興味あって…」といった感じだと担当者の人に冷たくあしらわれる可能性もあります。
なぜならば適切なアドバイスをしたくてもできないからです。
◯◯を作りたいから、◯◯の産地である△△で就農しよう。
△△で就農したいから、△△の特産品である◯◯を作ろう。
△△で就農して、誰も作っていない◇◇を作ろう。
私の場合は、
生まれ育った愛知県碧南市で就農したいから、碧南市の特産品である人参を作ろう。ですね。
特産品というのはその地域を代表し、その土地の気候風土を生かした物品とウィキペディアが言っています。
冬の間も積雪が無く、海と川に囲まれた砂地の畑は冬人参の栽培に適しており先人達の努力もあって特産品となったわけです。
つまり、特産品となるからには何らかの理由があり、栽培に有利な条件が揃っていたりするので就農を決めた土地ではどんな農産物が作られているのかは一度調べてみましょう。
どんな作物を栽培するかを決めたら、どこかで研修を受けて学んだり、作型を考えて繁忙期が他に作りたいと考えている作物と重ならないかなど相性をチェックした方が良いでしょう。ただ、その時点ではまだ机上の空論です。
実際に栽培を始めてみると気候が合わないとか、地質が合わないなどの予期せぬ問題が発生してくる事も十分に考えられ、採算が合わずその作物の栽培を取りやめなければいけないこともあります。
スタート時に借金をしてトラクターや管理機、収穫機、洗浄機などを揃えてしまっていたとすると汎用性の高いトラクターや管理機は良いですが、使用できる作物が限定されるような機械は無駄な投資となってしまいます。
専用機への投資は実際に栽培をしてみて、手応えや収益性を確かめてからをお勧めします。
限られた資金の中で最適な投資をするためには石橋を叩いて叩いて確認した後また叩いてもう一度確認するくらいでも良いのです。
どのように作るかも重要です。
地域慣行栽培、有機栽培、自然栽培。
施設栽培なら土耕、水耕、ロックウール、袋培地栽培。農法はあげればキリがありません。
理想の栽培方法があると思いますが自分の技能や情報量、資金、労働力をきちんと計算し現実を見ながら取り組むべきです。
鈴盛農園も恥ずかしい失敗があります。
就農一年目の頃、人参と並ぶもう一つの柱を作りたいとキャベツの栽培に取り組みました。
とりあえず試験的にやってみようと3,000株の苗をつくり、絶対に有機栽培でうまいキャベツを育ててやると息巻いて畑に定植。
しかし、
虫に対処する技術が無い、
草に対処する時間も人手も無い、
鳥に対処する知識はあっても資金が無い…
日に日に虫に食われて鳥につつかれてボロボロになっていく畑。結果的にまともに収穫できたのはなんとたったの5球。それを1球100円で販売しておしまい。
それからというものキャベツは二度と作っていません。
有機栽培という理想だけを追わず農薬の散布をするべきだったかも、最低限の資金を投入して虫除けトンネルを被せるべきだったかも、虫の少ない時期に合わせて定植をすればよかったのかも、などなどやれる事はたくさんあったと反省しました。
夢だけでは飯は食えない。でも夢がなければ美味い飯は食えないものです。
技術と資金が集まってこれば着実に理想と現実のギャップは埋まってきます。
日々の勉強や情報収集を怠らず、まずはきちんとお金を稼ぐことのできる農産物を作りましょう。