9月も後半。あっという間。
冬が近づいてくると講演や視察の依頼がグッと増えます。
この人の話が聞いてみたい、
前に聞いたあの話を次は別の仲間のところでも話してほしい、
そう思っていただけるのはとても有難い事ですね。
実際、僕は書籍を出しているわけでもないですし、メディアで活動しているわけでもないマイナー農家なわけです。
そんなマイナー農家が講演の依頼をいただくきっかけは一体何だったのでしょうか?
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数年前に全国農業青年クラブ連絡協議会(日本4Hクラブ)の会長をしていた頃、全国会長という肩書を利用して(笑)日本中、北から南まで飛び回って全国の農業関連の大会に参加しました。
もちろん、最初会長になった頃は講師としてではなく、来賓として挨拶のスピーチだけというところから始まりました。
一回の来賓挨拶の時間はわずか数分。
その数分で、必ず会場にいる仲間の胸にある情熱の火種を少しでも燃え上がらせたい!という「熱意の押しつけ」にも近い想いがあったので、挨拶のスピーチというものを非常に大切にしてきました。
形式上、下書き用紙のような物は用意しますが、実際はその時々に感じている「生」の気持ちや、その時入って来ている鮮度の高い「生」の情報などリアルな言葉をアドリブで伝えるようにしていました。
新規就農者で日本の農業をかっこよくしたいという勝手な使命感に燃えているヤツらしい。
という自分自身のキャラクターが認知されるのと共に、少しずつ
「今の全国会長って結構喋るタイプの人なのかな?」
という印象がついていったのかもしれません。
そこにプラスして、就農当初から書いているこのブログも大事な意味を持ち始めていました。
リアルタイムで畑の今や自分の現状を伝えるのにはFacebookが一役買ってくれていますが、
農業政策への考えや意見、新規就農者へのメッセージであったり農業のダークな現実の部分など、シリアスな内容はこのブログに書くようにしています。
「ブログで書かれているような新規就農からの農業への想いをぜひご自身の声で届けてもらえませんか?」
そういったお声がけは今でも多くあります。
そんなこんなで、まず4Hクラブの仲間たちが僕を表舞台に引き上げてくれました。
「会長、今度僕たちの県大会で講演してもらえませんか?」
本当にいろんなところに呼んでもらいました。
みんな、ありがとう。
北海道での講演は「農家の友」という雑誌に書き起こしして4ページにわたって掲載していただき自分自身の喋りを客観視することもできました。
また、北海道という環境で鈴盛農園の超小規模農業の話をしても受け入れてもらえないんじゃないか?と考え、この頃から講演内容のバリエーションを何パターンかに増やしています。
「鈴木会長は講演もやってるみたいだよ、うちの大会にも呼んでみようか?」
すると、各都道府県の農業青年のみならずそこに来ている多くの行政関係者や農業改良普及員の方たちにも声を届ける事ができます。
「今度、私たちが開催する新規就農者向け勉強会でも話してもらえないですか?」
「鈴木君、今度うちの大会でも今のやつ頼むよ!」
全国青年農業者育成研究集会での講演は、全国の普及員さん向けの冊子「技術と普及」になんと6ページにわたって掲載していただき、それを見ての講演依頼も多かったのを覚えています。
全国の農業大学校の集まる全国大会での講演以降は多くの農業大学校から声をかけていただきました。
衆議院と参議院の農林水産委員会にて参考人として答弁していますのでその議事録からというルートもあるかもしれません。
首相官邸での官民対話以降は大臣ルートで声をかけていただくなんて事もあって、地域最少最弱から始まった新規就農者がこうやって取り上げてもらえるなんて世の中って、農業って面白いなと感じたものです。
今思えば、最初のきっかけは小さな一歩である数分間のスピーチだったと思います。
そこに全力を注ぐことで全国規模の会議(どちらかというとお堅いところが開催する会議)に呼んでいただけるようになりました。
大規模な大会での講演はある意味では品定め会でもあると思っています。
そこに参加している多くの方は都道府県、市町村単位での勉強会や大会を企画する立場の人が多く、この話を地元の人にも聞かせてあげたいと思っていただければまた呼んでいただけるわけです。
来場者が多ければ多いほど次につながるチャンスは大きいのかもしれませんが、それより重要なのが参加者の意識であり、意識が高ければ高い人ほど真剣勝負で質問をしてくれて次のオファーをくれたりしますので会場の大小は関係ありません。
僕にとって何度も話した講演内容でも、聴いてくださる方の多くが初めて聞く話なワケです。
常に新鮮な気持ちで話ができるように、皆様にお伝えするのは自分の心の中に強く残っているエピソードを選ぶようにしています。
ありがたいことに多くの方に共感していただく事ができたのか、今いただく講演依頼の理由のほとんどが
「口コミ」と「リピート」
この2つです。
マイナー農家に講演依頼が舞い込む理由は実はここにあったんですね。
そうなると会場に着いたとき、鈴木さんの話を聞くのは2回目です、3回目ですと声をかけられる事が増えてきます。
それがたった一人であったとしても、一時間や二時間もまったく同じ話を聞かせてしまったらその人に申し訳ないという気持ちから、今現在の鈴盛農園の取り組みを内容に盛り込み「毎回必ず講演内容をアップデートする」をルールにしています。
嘘情報を盛り込んでもしょうがないのでみなさんに新しい何かをお伝えするには取り組みを考えるのみではなくきちんと実践しなければなりません。
結果的に農業経営も活発化するという非常に良いスパイラルも生じるようになりました。
講演活動は本当に多くの出会いをもたらしてくれます。
それが僕の人生を豊かにしてくれているのは間違いありません。
また、自分をさらけ出すことはエネルギーのいる事ですが、情熱を込めて語る事で誰かの心に何かを感じてもらえたのならそんなに嬉しいことはありません。
この冬も、たくさんの方にお会いできるのを楽しみにしています。
どんどん声かけてくださいねー!