去年の、まさににこの季節、インフルエンザワクチンを1週間以内に2回打った母、その後もすくすくと生きながらえ、卒寿まで早2か月の着地態勢に入った。

 

さて、今年はどうしようか、のインフルエンザワクチンなのである。

もう90だし、ワクチンとはいえ、異物は異物だし、肺炎球菌ワクチンも先月初デビューしちゃったもんね、の母。

ワクチンといえば、全部同じものだと思っている。

9月には肺炎球菌ワクチンを今年は二人そろって打つ、と兄が宣言した時、ワクチン不要派の兄にしては珍しいので、マジで? と1日中訊き返していた。

 

ワクチン接種先の雪駄先生に、89歳で肺炎球菌、初めてなの? と、驚かれたというので、巷のご老人達はしっかりワクチン注入していたのか、とこちらも驚く。

65歳から5年刻みで市からワクチン接種の申し込み用紙が母にも確かに届いていた。

届いてはいたのだが、85歳までずっと根拠もなく「私は肺炎にはならないから」と豪語しつつ、完全スルーの母であった。

いえいえ、あなたは、80代初頭、風邪を悪化させ肺炎になり損ねておりますが、と念仏の如く唱えてあげたが、聴く耳はもちろん持たない。

 

10月に入って、母と同世代の知人が続々と「私、ワクチン打ちました」宣言を発令し始めた。

もう?

早すぎないか?

効き目がなくなったらまた打てばいい、などと言うご婦人もいる。

しかし、お上のお達しには微塵の疑いもなく、従順な昭和の人々のなんと多いことか。

お上は私たちの味方、この思考回路が根強い世代なのである。

 

コロナワクチン7回目&インフルワクチンを2週空けて打ちました、という持病持ちの母の友人は、10月に入ってすぐにワクチン連続攻撃をかかりつけ医から勧告され、早めに打てたことに感謝の念さえ抱いている。

ワクチン打てば罹らないという、この信念に拍手さえしたくなる。

勿論、体調は何事もなく、コロナもインフルもノン副作用だとも聞いた。

恐るべし、昭和の細胞、というか、もう老化していて、反応無し? なのか。

 

母も1か月の間隔はあるもの、連続ワクチン攻撃で、反対に老いた細胞が耐えられるのか、と1分ほど考えたが、やはり週に一度とはいえ、お仲間のいるミニテニスへ通っているので、打つことに決定した。

しかも、今年の巷は、かなり流行っているというインフルエンザ。

マスクを外した人たちよ、の影響もあります、とメディアで簡単な原因究明をしていて、マスクを随分前から外しっぱなしの家族一同としては不安材料、ひとポチとなる。

 

というわけで、今週の初めに兄に連れられワクチンを打ちに行った母に、打ち終わった頃合いを狙って電話をしてみた。

 

打ってきたの?

打ったよ、なぁーんともないよ。

 

出た。

私は何をしても何があっても、「何ともない」ワード。

 

コロナの時も肺炎球菌の時も、そう言ってなぜか嬉しそうに笑っていた。

だが、肺炎球菌では、上腕は赤く多少腫れあがっていたし、コロナの時も腕が上げずらそうであった。

最早、痛点感覚麻痺してるのか、と思い、ちょっとつねってみるとかなり痛がるので、娘より痛みに弱いことが判明した。

しかも、あなたは先日の健康診断の診察時、「不整脈」が出ているので医師から結果次第では要注意です、と言われていたではないか。

 

注射なんてあっという間、だよ。

そりゃそうだけど、その後が問題なのよ。

 

翌日、また電話をして、体調はどうかと訊いてみたら、元気元気、とかえって元気エネルギーを注入されたような話しぶりなのである。

 

更にその翌日には、年に一度の歯科検診にまたまた兄に連れていかれ、見事に揃っている27本の歯を表彰モノですね、と医師から褒められ至極ご満悦となっていた。

週末に電話をすれば、ワクチンを打ったことなどすっかり忘れ切っていて、去年の二の舞を繰り返しそうない勢い? の母なのであった。