読む気は全然なかったけど、表紙がきれいだったから開いてみちゃった、そんな本がビンゴだったりすると、その日の運は全て使い切った、と思う。
ここ数カ月、そんな出会いはなかったのだけれど、久々にそんなビンゴ本を手にした。
読み始めた途端、止まらない。
でも、勿体ないから、止めてほしい、そんなワタクシ時間なのである。
元々この人、短歌より、文章メインで書いたほうがいいよ、と思っていたので、やっぱりの念を強くしつつ、次へ次へと読み進んでしまう。
誰か、止めて。
目のツケドコロ、耳のツケドコロ、言葉のツケドコロ、がまず面白い。
ドラマみたいに面白い。
いやいや、これはある種の1分ドラマ、みたいなものか、と思いつつ、読んでいるのではなく、ガラス越しに観てます、といったほうがしっくりくる。
その本のタイトルは、「彗星交差点」。
地味に好きな穂村弘の日々の小話を、みたいな一冊。
高校時代の古文の先生にそっくりで、写真を見た時、思わず「○○先生」と錯覚しつつ、ワケもなく親近感倍増して、穂村先生の本を時折手にするようになった。
結構、有名な歌人の人と後で知ったものの、短歌よりも、親近感倍増のエッセイがお気に入りとなった。
以来、ずっと「穂村のほ」と呼んで、たまに新聞などでもお見かけし、相変わらずお達者な文を書く人だな、とほっこりしていた。
最近、全く読んでいなかったのだけれど、久々のビンゴ本が穂村のほ、なのであった。
ちょっと頷ける。
たい焼き、タコ焼き、明石焼き、イカ焼き、根性焼き、このあたりの会話や、名前の伝え方や、とにかく、どうでもいいようなことでくすりとなるなぁ、と、穂村のほ、よく書いてくれたね、と肩をもんであげたい。
「くすり」の笑いが、この病んでいる体のマシ薬になってくれそうで、花丸も二重にしたい、そんな作品。
実はまだ、「くすり」を持続させたくて交差点半ばにいるのだが、言い切っていいよね、の「穂村のほ」なのである。