10年ほど前に読んだはずの宇江佐真理の時代小説、3品を再読。

「恋いちもんめ」「十日えびす」「日本橋本石町やさぐれ長屋」とタイトルだけはしっかりと記憶している。

彼女の作品は全て完読していると珍しく自負したくなる宇江佐マニアなのだから、当

然、この好みのタイトル3作品も読んでいた。

はず。

なのに、再読してみれば、最初の2作品はキャラの名前以外ほぼ覚えていない。

かすかな陽炎のように、登場人物のその後が浮き上がるのだが、この展開は一体どうなるのだっけ、となり、あれよあれよの1冊、1時間読破、となる。

 

勿体ない。

あっという間に終わってしまったじゃない、

大好きな作家なので無尽蔵の愛おしさをプラスして再読しているせいか、キャラも文章も硬すぎず、砕けすぎずの程よい読後感に時を忘れる。

 

初めて読んだ作品が「髪結い伊三次」シリーズで、賞取りの作品だとも知らずに読んでいたのだが、最終巻「擬宝珠のある橋」で、この作品とお別れする日が来たときは、ただただ涙の寂しさなのであった。

 

好きな作家が亡くなるたびに、取り残されたように呆然とするのだが、彼女が亡くなった時は、この先何を読んだらいいのかと途方に暮れた。

なので、こんな風に再読できるようになった我が記憶の忘却に、少し嬉しくなった弥生三月の江戸景色なのであった。