(スティーヴン・キングを思い出した午後3時)

 

インフルワクチンを間違えて2度打ち、顔面強打の転倒を乗り越え、89歳を無事に迎えた母。

28日には年内最後のミニテニスクラブに出陣し、さらに老熟度達成感を増したせいか、こんな冬の年末はもう何もしなくていいの、と電話で宣言していた。

 

仏壇と神棚、天井のすす払い位はやったほうがいいんじゃないの、と意見を述べたら、いつもやってるからいい、と幻想交じりの返事で応酬された。

母と同居している兄は生まれた時から(多分)神事には一切興味なく、神仏のお詣りは自ら行ったことは一度もない。

なので、年神様を迎える云々の蘊蓄をたれる妹は、異星人扱いのまま彼岸の岸辺へと流され、当然、年末の掃除はいつも通りするだけで年始がなんだ、という表情でいつもと変わらぬ日常を過ごす。

しかし、この兄、清掃能力にかけては、妹よりもかなり優れている。

キッチン周りや風呂場など、とにかく計画性が高く能率的にプロ並みの掃除をしてくれる。

なので、母の信頼も厚い。

大ザッパー族の妹とは正反対なのである。

 

家の主ふたりに見向かれもしない、仏壇と神棚は実家に帰る年末、ワタクシがささっとやればいい、と気持ちをまとめて、2日後にはそのミッションも無事終了。

年末の買い出しをすませ、疲労を蓄積したまま、おせちを作っていた午後。

品だし係の母に突然年末モードスイッチが入ったのである。

きっかけは、ワタクシの軽い言動。

友人がお義母さんの部屋の障子張をしたという話をしつつ、うちの障子はいつ張り替えたんだっけ、なんか薄暗いよね、障子張、おかーさんよくひとりでやってたよね、横3升ずつ丁寧にねー、みたいなことを話していたら、突然スイッチオンとなってしまった。

 

障子、貼る、貼らなきゃ、あれは暗いと思っていたの。

薄汚れているような気もする。

小さな穴のところも2か所あるから、気になっていたの、

障子紙は沢山買ってあるし、糊も刷毛もおかーさん持ってるから、と。

 

午後3時過ぎ、乾燥気味すぎる晴天ですが、外は気温8度です。

これから4枚も障子貼るつもりですか、おかーさん。

終日エアコンつけっぱなしでぬくぬく過ごしている私たちが、そんなシベリア抑留みたいな過酷な世界へ飛び込むの、今から。

 

4枚全部じゃなくて3枚だけでもいいから、やれるだけやる、ひとりでもできるから、いいよ、と2階へ行って障子紙を3巻も持ってきたのである。

 

どこにあったの、そんな沢山。

 

だけど、その巻で横3升ずつ貼ったら、年が明けそうなんですが、おかーさん、とあきらめさせようとするものの、全く動じない母。

こうなるとワタクシの手に負えない。

2階の兄に、母、やる気満々なんだよ、どーする、と緊急速報を携帯で告げた途端、雲まで出てきたかいじつ、前日。

 

これから本当に障子貼るの? おかーさん。