赤まんまの揺れる道をゆるゆると歩き続ける。
脱穀を終えた藁束の山が四方に散らばったまま、ゆく秋を告げている。
昨日手にしたと思った秋が、するりと逃げてゆくほどの速さで季節は変わる。
感情のさざ波は波浪の強弱で麦色に変色していき、秋の夕暮れの余韻は、半時計周りに胸に沁みこむ。
見上げた空は錆浅葱に一途に暮れてゆく。
視線の先にはアキアカネの小さな群れだ。
意味もなく、ぐるぐると人差し指を回したくなって足を止めると、とんぼのめがねの歌もフルコーラスで思い出していることに口角があがる。
空を飛んで水色、おてんとうさまをみてピカピカ、ゆうやけぐもをみて赤色、ならば私の今のメガネは何色なのだろう。
昨日、昼の真ん中あたりで見あげた水浅黄色の雲ひとつない空を思い浮かべる。
薄くやわらかな空の果てをあきることなく眺めていた、その時間はもう二度と戻らない。
あたりまえのことを心にとめて、けれど、もう一度あの水浅黄に染まりたいと願うのだ。