どこか懐かしい面立ち、どこか懐かしい民族衣装で思いがけずの親近感出現の国、ブータン。

世界地図のあのたあり、しかわからない国ブータン。

確か幸福度ナンバーワンと若い国王で多少話題になっていたっけ、のブータン。

確か何かの賞にノミネートされて話題にはなっていた映画だよな、のブータン。

古い記憶をまさぐり、「ブータン山の教室」のさわりだけ見ようとスイッチオンしたのだが、あれよあれよと観続けてしまった。

 

山の教室に至るまでの導入部、首都ティンプーはそれなりの経済成長を遂げつつある都市なので、山の教室のある村とのギャップに驚く。

日本のポツンと一軒家も、ここまでの原風景的生活ぶりはないだろう、と思う。

 

しかも、舞台となるルナナ村は標高4800mにある実在の村。

富士山より高い。

そんなところで暮らせる人々の持つ生命力に圧倒されつつも、その生活を淡々と映し出す流れに身を任せる。

 

酸素酸素、と観ていても息苦しくなるようなルナナ村までの道のりがまたすごい。

教師をやめるつもりの主人公が、教師として村に派遣されるのだが、彼のためにだけトイレットペーパーを買う、という村人の言葉で、またまたどこだ、ここは、となる。

 

葉っぱで用を足し、電気はソーラーのみ、山歩きも長靴で、靴一足が勿体ないという村人たち。

生活環境でいえぱ、劣悪なのだが、そんな場所で暮らしている人たちはどこか不思議とさいわいなのである。

久々に思い出した、「銀河鉄道の夜」のジョバンニの言葉。

「ほんとうのさいわいは一体何だろう」

エンディングの余白を自分なりの色合いで染められそうな、そんな幸福度を少しだけ味わえる作品なのであった。