日ざしの柔らかさに誘われて
外に出る
あれもこれも投げ出して
外に出る

静かに連れ添う老夫婦
気の早い夏服の少女たち
ランダム送りの子供たち
道端のカキツバタが
平安で
うららかなりと
歌を一句

洗いたての顔に
降り注ぐ日ざし

ああ何もしてない何もいらない
こんないち日

吸って吐く息が
ただのあたしで
それだけのためのいち日が
遠い昔のあたしを染める

はじめて蟻を見た日の
揃えたての前髪

砂粒の中に埋められた
宇宙に手を伸ばして
探し続けていたものたち

はじめてふれた彼岸花の
色の名前を
言葉にしようと
閉じたまぶた

ああ なにもないいち日の
はじまりもおわりもない
そんな空気に包まれて

外は
めぐるめくりの季節なり