年々、行き先が近くなる年に2回の一泊旅行。
春と秋の過ごしやすい時期を選び、老化鑑定のバロメーターとして、わが身を鼓舞しつつ旅先を選ぶ。

30代、40代の頃は飛行機で近い海外や遠い国内を選んでいたのに、今は車で往復距離は300キロ範囲内の一泊と決めている。
多少の無理が、後々のわが身を苦しめる結果となるお年頃なのである。

地図上にコンパスで円を描くと、その範囲内での行きたい場所は限られ、また今年もこの方面ですか? となる。
ならば行かなければいいわけで、今年はもうやめようかと思っていたのだが、梅の花がほころび始め、旅番組が春を告げると、今年も行くか、となる。

日々、後は死ぬだけと口癖のように言ってるわりに、3月に入ると「温泉行こうかな」となるので「また今回も最後の旅ですか」と夫に返されるようになる始末。

ここ数年は高齢の母も一緒である。
今回も声をかけると即座に「行く」。
どこに行くとも決めてないのだけど「行く、連れて行ってくれるならどこでも行く」と言うので、なぜか安心する。
これが「私は家にいるのが一番」となると「ついにその領域に入ったのか」と多少不安になる。
足腰が動くうちは、色んなところへ引きずり回したいのだが、年々自分の足腰が思うようにならなくなってきて、予約したその日まで無事で過ごせるのかと不安な日々が続く。

そして、昔は、となる。
昔は、予約した途端、色々なプランが頭の中を駆け巡り、旅の楽しみがその日まで倍増していた。
旅先での行動を時系列でシュミレーションし、毎夜、未体験の観光ゾーンが仮想空間となって現れたりして、中々眠れず、まさに小学生の遠足前日状態。
確か旅行の前日はレム睡眠だけで夜中を過ごし、頭が変にクリアになっていた覚えがある。

それが今は、キャンセルせずに目的の日まで何事もなく過ごせるだろうかと、その日まで違う意味での浅い眠りが続く。
その昔、沖縄旅行を当日の午前5時にキャンセルしたトラウマがふと蘇り、キャンセルについての注意事項を熟読したりし、疲れることこの上ない。
なのに、今年も予約をした春旅なのである。
しかも今回は、本気の最後を覚悟してエリア拡大の意を決しての勇気ある予約である。
ちょっと遠い。
往復約350キロ。
大して違わないと思うけど、と夫の冷ややかなコメントを無視しつつ、旅先の吟味に入る。

最後になるかもかもしれない旅。
今際の際で思い出した時、安らかに思い出せる場所であろか、などと想像しながら、脳細胞の隅々に目的地までのキーワードを覚えこませる。

さて、還暦も間近いおばさんの旅先での最近の楽しみ、それはなんとご当地スーパー探しである。
(やっとここで本タイトルに近づきました)

道中での観光よりも地元のスーパーで地元にしかない食品を買いたい、というのがマイブームとなっている。
きっかけは、軽井沢にあるツルヤという別荘族ご用達のスーパーであった。
店内に入った途端、広々とした空間が広がっている。
ここでしか買えないお土産ではなく、ここでしか買えないアイテムの豊富なこと。
軽井沢以外にも、よく行く箱根、伊豆などにも、調べ始めると大型の地元スーパーが結構あることに気づく。
不安な日々にも負けず、旅先での楽しみをひとつ増やしたわけで、我ながら前向き路線である。

地方に行くと今ブームの道の駅や直売所も外せないが、この地元スーパーも侮れない。
観光ガイドやネットで人気なのに、お味は今ひとつのお土産より喜ばれることさえある。
最近は更に地元のコンビニにも視野を拡大しつつあり、そんなことを興奮しつつ調べていると、一体あなたは何をしに行くのかと、例のごとく夫の冷ややかなコメントが突風のように過ぎ去る。
その瞬間、ふと我に返り、そう旅行に行くのであったと、しばし放心する私なのであった。