寒くなると「しなくてはならないこと」が増える。
そして、寒くなると「動きたくない度」も増える。
引力の法則のようなこのバランスのみに見事支配されるのが「冬」の私である。

冬の朝、起きたての私は、生まれたばかりの赤子のように自分の意とする行動ができず、10分ほど成長を待つ。
ようやく歩けるようになると、だるまのように着膨れて隣の部屋の雨戸を開ける。よろよろ度80%の老婆である。
が、しかし途端に目に付く、掃きだし窓の結露に「敵は今日もやる気か」と一人つぶやき、よろよろ度が多少の回復をみせる。
毎年、結露シートを施工しているのに一向になくならない結露との格闘がしばし続く、といっても軽く拭くだけなのに冬の私にとってはかなりの労力である。

さて、エアコンの乾燥に弱い私の、朝のメイン暖房はファンヒーターとコタツである。
おのおの方にスイッチを入れ、ようやく朝餉の支度へと徒歩7歩でキッチンへ。
各部屋、といっても和室2間と名ばかりのDKの3居室を徒歩10歩内で移動できるこの住まいが、この年になってしみじみありがたいと思えるようになった。
心から素直に「狭くて良かった」と思える冬の朝である。

朝食から夫の出勤までの1時間をどうにかこなし、洗濯を終えるとやっと自分の朝時間となる。
新聞を読み始める前に、咽頭と鼻のお世話に入る。
慢性的に扁桃腺が痛くなる冬はこれを欠かすと途端に耳鼻科のお世話になる、油断のならないパーツである。
ホットシャワースチームで約10分の加湿後、蒸気でしばしぼーっとした頭のまま、目を閉じる。冬になると何故かしみしみと目も痛くなる。
その後慢性胃痛を予防するためにマヌカハニーをなめ、蜂蜜ドリンクをつくる。最近は麹とお粥で作った甘酒も投入したりして、朝から甘い生活である。
新聞を読み終わる頃には時刻はすでに9時を回っている。
起床して3時間、ようやく身体の部品がこなれてきた感じになり、呼吸が楽になったような気がするのもこの時間である。
さて次は、テレビのワイドショーを見ながら、もう5年間も痺れている両足のお世話に入る。
足首の屈伸と腰部のストレッチまがいのものを5分程して、昨日とさほど変化のないことにほっとする。

自分の身体なのに、まるで他人のような関係である。
「今日はどうなの?」と毎日聞かずにはいられない面倒な関係が常態化する冬の朝。
本当に春が待ち遠しい。