てを閉ざして
息を抜く
足の爪
どこまで伸びるのだろう
と 考えながら
抜いた息を捨てに行く

針葉樹のような部屋から
占うように右足の一歩
わずかなかけひきの日常が
空転して
滑り落ちてゆく

さざ波の群衆は
相変わらず
あの人よりも幸せな思考回路の
時間軸を
疑いもなく歩いている
ターミナルの信号は
点滅をはじめ
立ち止まる人と走る人の
振り分けに忙しい

中央広場の花鉢には
見覚えのある老婆の閉じた瞼
雨の降らない空の色を
思い出す ほつれた背中

幻影は私
おりのように沈んでゆく
息の重さで支えきれない からだ
ひとつぶんの


息を捨てに行く