店に入ると
外は決まって糸状の雨
傘をさしたり ささなかったり
街角は 朝焼けだったり
夕焼けだったり

レモンのスライスの厚さも
ただのまるみのある黄色

不規則に連なったアドレス帳の
消息もきれいにそろえられ
さほど疲れてもいない体に
背負った
薄汚れたイタミなど 雨に流し
あの日の海風は 思い出の砂丘
に転がり 濡れあえぎ
とりあえず
ニ長調のカノン
聞き流しながら
永遠に
消えない文字を書きつづる

鳶色のテーブルの上で
くしゃくしゃに丸められた
誰かの一生にもさよならして
行きつく先はどこも同じなのに
また
歩きだすんだね

青い矢印の方向線
すっと消えて
行先を失ったはずの交差点
声をあげているのは
だれ