画面の中には闘いの

表情を作る政治家と

事実を伝えて使命を果たす満足そうなアナウンサーの

解決のない永遠が続いている

ドアを開けると春の香りで

私は吸い込む空気を加減している自分を笑い

先は短い命だと

日頃の軽い口癖の裏に

確かな日常があったことに

今さら気づく

 

沢山の涙を流したあとにやっと

私達は気づくのだけれど

時は既に人の手を離れ

神の領域へと移されて

私達は途方に暮れたまま

祈る言葉を探している

失うことの意味にうちのめされ

拡がっていく傷口は

誰の手によりふさがれるのか

ぼんやりとした非常灯のありかをたぐる

いくつもの手は

いつか私の手と重なるのだ きっと

 

今年も咲いたユスラウメの

白い花の この傷ついた日々を

思い出すのはいつだろう

 

停止した画面が動き出し

私達は昨日と同じように

扉を開ける

 

繰り返される後悔を

またひとつ 胸に落として



これは東北の震災後に書いた詩、熊本地震のその後の1ヶ月を
思うと何も変わってないような気がするこの国の災害後の日々
明日はわが身と、肝、すえる