とてもゆるやかに日が暮れて
下弦の月の切れ端が
東の空に浮かんでいるから
夕食までの片道を
一人ではなく二人のリズムで
歩いて帰ろう
口ずさむ曲は5月のレクイエム
変奏曲で流れ出す
7年の傷口を
閉じ込めるための
右回りのメトロノーム

耳の奥に届いている
君の言葉は音になり
心地よい体温の心拍が
とけた呪文みたいに
羅列して
あの日のステップに重なってゆく

見上げてもまだ
何を忘れてきたか思い出せない
残されたわずかな
余白に照らされた
この道筋をたどるだけの
実生のつま先

ささやかな食卓に飾る
ストロベリーキャンドルと
飲みかけの黄昏
窓枠に立てかけられた
読みかけの物語

月満ちて・・・・
やわらかな背中から
はばたくための
最後の羽