「 後 風 」         
 
 


乗り遅れたバスの右ウィンカー
点滅して
空中に分散してゆく
文字列のように
読めない未来へと発進する

ほどけないようにもう一度
3番乗場に佇む人々の
いち列の静寂
たどるように目を向けて
染み出した数の時刻表は
水音をたてて 流れ出す

残されたのは十字路の石礫

行く先を決めたそのわけを知りたくて
揺れることのない花束を抱え
私は硬化してゆく
から
不意の風の向きを
肌でおしはかり 声を閉じる

いま
始まったばかりの1日のように
バスは新しい人々を乗せて
陽炎の道を曲がる