事件ですよ、奥さん、と不意に背中をどつかれたような気分の数日であった。
まず事件の第一報は、普段全く他人のすることに興味のない兄からの一声であった。
あなたの買っている水素水について面白い記事を見つけたから読んでみたら、と何気なく言われ、何気なく読んでしまったら、これが何気なくそうなの、といえないような事態に陥ってしまった。
見出しの文字が目に入った途端、やられましたな、のアドレナリンが放出。
水素水の「体にいい」は、科学的に全く根拠のないインチキだった、というズバリ賞みたいな書き方で始まり、高校生レベルの化学の知識があれば、水素水がウソだとすぐ見破れる、科学的根拠全くなし云々、といったものであった。
多分、小学生レベルの科学知識すらうっすらレベルの私、水素ってなんだっけ。
この記事、水素水に対して決して敵意を感じるものではなく、単純明快な説明、かつかなり客観的に書かれているから更に悲しい。
そもそもこの水素水、買おうというきっかけは、週に1度は通う温浴施設で試しに買って飲んでみたら、翌日の目覚めが実にスッキリしていたという実体験からで、買ってみようかと心揺れていたある日、テレビの健康番組でやたら血液検査が良い女優が常用しているのが水素水。で、これ、買い決定ね、ということになった。
毎日1本(250ミリリットル)を飲むと効果的、と書かれていたけれど、我が家にとっては、結構なお値段のため、1日おきに飲み続けて4本ほど飲みきったところで、兄からのお声であった。
人間とは本当に不思議なもので、そんな記事を読んでしまうと、4本飲んでも効果が全く感じられないような気になる。
昨日までは、4本飲んだけど、体の変化はこれからよねぇ、などと効果が出てくるのを楽しみにしている自分がいたのに、そんな記事ひとつで、体も心もはしゅんとしぼんでいく。
効果がある、ないの賛否両論を読み、良いほうだけを心にインプットできればよいのに、私の場合は悪いほうだけがインプットされる傾向にある。
で、結局、残りの水素水を翌日飲んでみると、ちょっとおいしい水、にすぎなくなってしまったのであった。

次に、第二の事件は友人からのメールで知る「オリーブオイルに猛毒?」という情報。
もこみち、どうしてるかなとまず頭に浮かぶのがおかしい。
我が家の調味料、味噌、醤油、砂糖、油の4本柱のひとつ、オリーブオイル、しかもエクストラバージンオリーブオイル、しかもイタリア産。これがいけないらしい。
ここ数日の新聞には一切掲載されていなかった、そのオリーブオイル事件。
どこで騒がれているの?  現場はどこ?   真相究明アドレナリン放出。
早速、ネットでオリーブと入力するとすでに検索ボックスの下に、オリーブオイル硫酸銅の文字が一発で登場。もう登場してるじゃない、私乗り遅れた?
既に世間では4、5日前からこの話題が炎上していたらしいというのに、昨日もいつも買うエクストラバージンオリーブを購入したばかりの私。
炒め料理にはほとんどオリーブオイル、たまにごま油のバリエーションで使用し、他にはえごま油、くるみ油、米油、ココナツオイルなどを品揃えしているが主流はオリーブなのである、しかもエクストラ、しかもイタリア産。
どうしよう、これ、と悩んでいる場合ではなく、こんな時だけ、即行動の人であるワタクシは早速販売元へ問い合わせをしてみることに。
あっけないほど、明快に「弊社製品は検査済です」とカスタマーさんに言われ、私の心はいともたやすくスッキリ爽快。
そうだよね、このオリーブ、フルーティでおいしいもん、低温になると固まるし、純度100だよね、などとオリーブ数本をそっとなでる。
さっきまで、これ、全部捨てるかー、なんてちらっと思っていた気持ちはどこへやらである。
しかし、オリーブオイルについて改めて調べてみると、エクストラは確実に炒め物には向かないということであった。
知ってはいたけれど、まさか温度が高くなると悪質な油に変身するとは。
炒め物への使用は不可、とでも書いておいてほしいよ、オリーブオイルエクストラバージンさん。

そして、ふと我に返ると、ここ数日、私はオセロの人であったな、としんみり思う。
黒石の置いた場所ひとつで一気に白石が黒石一色に変わる、そんな感じの右往左往感で頭が一杯一杯になっていたなぁと。
今日の白が明日には黒になる、それが今の世の中かもしれないと、とりあえず肝に銘じておこう。