スイマー
迷いを断ち切るためだけの
クロールの抜き手
肩から抜ける力が
泡になって消えてゆく
しなやかなドルフィンキックで
目覚めた朝
何もかも忘れて
一番のりの第5コースを泳ぐ
ため込んだ息を吐き出しながら
夢とは程遠い
壊れたみたいなクロールにネジを巻き
涙色の水中を
どこまでも潜水してゆく
刹那の鼓動で
浮上する体
水面すれすれの日常を
永遠のリズムで泳ぎ続ける
左右の抜き手
スライドをはじめた天空から
落ちてくる光のライン
時間切れのメロディーが
耳の奥にかすかに響き
半身の魚影の群れに広がる
真新しい朝