短歌編    

降り出した大粒の雨は夏草の匂い含んで歌いだす


八月の光る緑を仰ぎ見てこの世とあの世の境を探す


黄昏が時の針を染めてゆく君にさよなら告げた秋


もうずっと声はきかずにメールだけこの世の最後もクリックひとつで


雨音は心に落ちて滲み出す不安な日々の水たまりへと


帰宅する夫の体にからみつく疲労困憊雨だれの虹


小さくて大きな母に寄り添いて眠っていたい正月の朝