わ け  


永遠に続く長い旅みたいに

ドアを閉めて

アクセルを踏み込む

きょうの夏

 

外気温の数字を確かめて

心の温度を測りながら

今日の私を見つけている

 

心の場所を失って

言葉の優しさを失って

涙の形に眠り続け

起きあがるたびに

意味を失った命を確かめて

 

後ろ姿のあなたに話しかけて

声のない言葉で

話しかけて

 

繰り返す

朝の祈りみたいなツブヤキを
今日も心の底に重ねていく

わけはきかない

ナビゲーションの現在位置が
幻みたいに
点滅して
座標をなくした明日がまたくる

 

 

 

 

 3月の空 

 

綿雲を散らして

過去に伸びる3月の空

その日が遠いあの日になって

平穏無事な1日が

嘘のように流れてゆく

その日「さんがつ」という

春の響きは封印され

傍観者たちは

思い出したように頭を垂れる

見えるものだけを信じたまま

風化されてゆく記憶さえも

あの日の海に流して…

 

再稼動の文字が並ぶ朝のテーブル

重なることの無い感情は

ありきたりな朝食と共に

慌しく片付けられ

飲み残した珈琲だけが日常を取り戻す

そうして私たちは
目を通したことにする
後悔したことにする

したことにして終わりにする

3月の響きを一度だけかみしめて。