秋止符
11月
あなたを送り出す
朝焼けの空に飛行機雲
燃えるようなオレンジの
深呼吸を繰り返し
足元のゴミ袋を拾い上げ
ルールに沿った人生を
週に3回捨てにいく
置き忘れた過去タチが
降るように落ちてくる
秋の夕暮れ
戻せない時計の針が
今も
あの日を刻み続けて
心の重さを巻き戻す
明日はきっと
秋の終わりを告げる花を
あなたと見に行こう
その朝
目覚ましを止めた指先から
また
朝の困惑が拡がるのだ
日々の繰り返しを
丁寧に 時系列にして
思うのだけれど
呆然として
目覚めた後も眠っている
私の身体
力の入らない 心の重さが
これほどまでに
意味をもつものと
またひとつ気づく あの日から
またひとつ
そうしてひとつずつ
私は誰かの為に
重ねた嘘を
てのひらにひとつずつ
包み込んでいたのかもしれない
降り出した雨の音に
消されてゆく
朝のざわめき
開け放した窓の向こうで
移り変わるあじさいの
刹那のように こぼれてゆく
私の朝
覚 醒
私達は
何度目覚めるのだろう
日曜日の朝
残酷な夢の残像に
再びまぶたを閉じる
こうしていつか
永遠の眠りにつける日が
ある日突然くるとしても
それは片隅の出来事で
変わらない日常は
あなたの為に永遠に続くのだ
どこまでも愚かな
私達は
最後のナニカを失って
引き返せない道にいる
また明日も 前に進むしかないことを
知らされる為に目覚めるのだろうか
灯りを消した街に佇み
月の大きさに見とれている
全ての窓に
小さなため息が
星のように輝いている夜
語り人は声を落として、眠りにつく