毎日暑い日が続きますね。この気候が人間の活動による温室効果ガスのためだとしたら、私たちは何ができるのか、考えたくなります。また、連日、アメリカの大統領候補についての報道を目にします。トランプ前大統領が銃撃されたニュース、バイデン大統領の次期大統領選からの撤退、後継候補のカマラ・ハリス副大統領の動向など、大変気になります。これら、「気候変動」や「アメリカ大統領選挙」についてニュースで見ている私たちが、その背景にある世界的な動向などを、わかりやすく知ることのできる新書が出版されました。上野貴弘著「グリーン戦争ー気候変動の国際政治」(中公新書)です。
グリーン戦争――気候変動の国際政治 (中公新書 2807) | 上野 貴弘 |本 | 通販 | Amazon
著者の上野貴弘氏は、東京大学教養学部、東京大学大学院修士課程修了後、電力中央研究所に入所、経済産業省および環境省の各種検討委員会の委員を務めるほか、COP(地球温暖化を防ぐための枠組みを議論する国際会議)にも通算16回参加されているとのこと。本書の冒頭に、COP21に参加していた上野氏が「パリ協定」が採択された瞬間、多くの参加者と抱き合い、力いっぱい拍手をして感動を分かち合った瞬間の描写があります。一読者の私もその臨場感に感動を覚えました。
「気候変動」は人類共通の課題で、2015年のCOP21にて、各国が「パリ協定」に同意しました。2017年に、トランプ大統領が脱退を宣言しましたが、バイデン大統領が就任日にパリ協定への復帰を国連に通告しました。時期大統領が誰になるかによって、アメリカの気候変動への取り組みが変わってしまう懸念があることについて、本書を読むと理解が進みます。また、温室効果ガスの削減に対する取り組みはアメリカのみならず、中国やインドなどの新興国や、小島しょ国、EUの国々、ロシアや中東の産油国など各国の利害が錯綜しています。産業、貿易、金融、エネルギーなどの観点からこれらの激しい国家間対立を解説し、世界や日本の進むべき道を解き明かす本書は、正に必読の書と感じます。
連日の猛暑に苦しむ私たちや、アメリカ大統領選挙のニュースが気になる方に本書がお勧めなのはもちろんのこと、これから就職や受験を控えていらっしゃる方の、面接で聞かれる「最近読んだ本」の答えとしても適切な本ではないかと思います。内容のアカデミックさや、環境問題を切り口として産業や金融など多方面に渡る複雑な構造が丁寧に解きほぐされている書籍であることがその理由です。ぜひ皆さん、この名著を読んでみてください。