この記事は、はなしばい「ご主人様、盲るほどの愛を」のネタバレ感想です。ご注意ください。

五十嵐啓輔くん×赤星ユウさんの一人芝居作品、ご主人様盲愛。
まとまりないけど、つらつらと考察というか感じたこと、考えたことなどを書き留めておきます。


【1】ご主人様はなぜ薔薇に

こまけぇことはいいんだよ!と脚本家はコメンタリーでおっしゃってますが(笑)
なぜ、といっても、原因の追及ではなく、どういうこと?って話なんだけど。
これ、4つ考えられるなと思ってて。

①ひとつめ。
本当に、薔薇になってしまったパターン。
使用人の目の前で、なんらかの力(魔法や呪いなど)で。ファンタジー寄りの解釈。
服と靴は、薔薇の姿になる直前に着ていたもの。
薔薇の姿になってもご主人様を愛してる使用人。
どんな姿になっても愛してる…純愛といえば純愛ですね。

これについてはさらに枝分かれするんですけど、
(1)第三者が薔薇にした(そこに使用人の意図はない)
(2)第三者が薔薇にした(使用人の依頼によって)
(3)使用人自らご主人様を薔薇にした

下に行くにつれ狂気度が増すっていう。
もし(1)だったら、純愛感あるけど、(2)や(3)は、愛するがあまり、自分だけのものにしたくて魔法もしくは呪いをかけた、ってことに…
独占欲のなれの果てだ。


②ふたつめ。
ひとつめと少し近いけど、前提が異なってて、使用人自身が実は元は薔薇だった説。
薔薇の精というか…薔薇の擬人化(ガチの)
「本日の私は(略)ご主人様の望む通りの姿かたちを保てているでしょうか」「僕はいつも不安でした(中略)あなたと時を共にして、僕はようやく、安堵したのだと」、ここにひっかかって。姿かたちを保つ?

考えられるのは2つあって、
(1)薔薇を愛するご主人様の前に、普段から、ご主人様の望む見た目の人間の姿で現れていた。そしてご主人様を自分と同じ薔薇にしてしまった
もしくは
(2)ずっとご主人様の望む美しい薔薇としてそばに居たが、薔薇なのに人間を恋慕した末、ご主人様と、薔薇と人間で入れ替わった。

「今日僕はあなた好みの私」って言ってるから、少なくともご主人様は普段からなんらか、使用人に望みを抱いたり好みを迫っていた(と、少なくとも使用人は思っている)わけで…
その望みを叶えてきたためのご主人様のこの結末。
因果応報なのか、等価交換なのか。


③みっつめ。
他の人の感想でも見かけたけど、ご主人様は実は病気や事故等で死んでしまっていて、使用人はその死を受け入れられずに狂ってしまい、薔薇になったと思い込んで、あの薔薇をご主人様だと思い込んで、いる。
比較的ロマンティック解釈(笑)
スーツ姿の使用人の映像がサブリミナル的に挟まれるけど、あれ喪服ですかね。黒タイだもんね。
(いやもしかして、「永久に僕だけのもの」になる=「結婚」ってことで、あの格好の可能性もあるけど…でもあんま礼装には見えないんだよね)
女物のあの服や靴は、葬儀の時に、ご主人様が生前身につけていたものを譲り受けた、もしくは勝手に()持ち帰った。

純愛の末の狂気。
そして、「もう二度とあなたを離しません」という言葉が、悲しみを帯びてくる…悲恋。


④よっつめ。
薔薇は全て、死や死体の隠喩であり、本当は薔薇にはなってはいない。
観客(視聴者)には薔薇に見えてるけど、あの部屋には本当は、ご主人様の遺体が寝ているし、使用人はその遺体をかきいだいているわけです。
「薔薇の姿になっても」は、「死んでも」の意。
単純に演出としての隠喩かもしれないし、使用人はまじで狂ってしまっているために、幻覚で遺体が薔薇に見えてるのかもしれない。

そしてさらに枝分かれし、
(1)上記②に近いけど外的要因で死んだご主人様の遺体を非合法手段で手に入れた
(2)愛するあまり、使用人自らの手で殺した(もしくは意図せず殺してしまった)

いずれにしても狂ってるけど、それ以上に狂ってるのは、隠喩だと考えると、薔薇を舐めたりキスしたり…は死姦というか死体に愛撫してるってことになるし、その上花びらを口でむしってジャムにして食べる…ということはつまり、カニバリズム…。

だいぶホラーみの増す解釈です。
中盤から突然色の変わる松岡タイキさん作曲のBGMもそのホラーみを引き立ててくるし、
最後のジャムを口からしたたらせてニヤッとするところなんか、ゾッとしますね。
あれは、この解釈でいくと、血なのか…


あとこれ、①~④全てに言えることだけど、
下記2つがどうなのかによってまた話が全然変わってくるなぁと。

(1)ご主人様は使用人を愛していたのかどうか。人間としてであれ、薔薇としてであれ。
台本のト書きを読む限り、あの首輪を主人から与えられていたようなので、愛玩的な愛はあったのかもしれない。
でも、ご主人様と(こうなってから初めて?)時を共にしてようやく安堵した、と使用人が言ってるように、
今までは共に過ごせるような状態ではなかったということ。

(2)ご主人様は、薔薇になる(もしくは死ぬ)ことを受け入れていたのかどうか。
これは(1)とも繋がるけど、使用人を愛していて、自分が薔薇になること、死ぬことをわかっていて、望んで(もしくは受け入れて)こうなったのか、それともそうではないのか、によって、残酷さとかやばさが全然変わってくるなぁと…



【2】一人称が変わる謎
僕、私、が1つの台詞の中で混在してるのは、ものすごくユウさんの意図を感じるなと初見でも思ったけど、
特典映像で、サブリミナル的挟まれるスーツの映像は、「私」である使用人の姿って言ってたから、
つまり、使用人の素としては「僕」で、ご主人様から求められる、ご主人様好みの姿は「私」
ってことでいいんですかね。

最初、薔薇の花びらの中に横たわってる姿を見て、実はご主人様が男性で、使用人の方が女性で、使用人はご主人様の姿かたちを模してるのかな、
あの女性ものの服は使用人のものかな、なんて深読みしちゃったんだけど、
台本に、主人の服や靴が散らばっている、ってト書きがあったから、さすがに考えすぎでしたね(笑)

これであなたは永久に私のもの。僕だけのもの。
って、一人称を変えて復唱して(言いなおして)いるのが、あなたの望む「私」と、そうではない、あなたの言いなりにはならない「僕」の、”二人”の、それぞれ別の意図を感じて、ゾクッとします。


【3】薔薇を食すことの意味
先の【1】でもちょっと触れたけど、もし薔薇が女体や遺体の隠喩なら、カニバリズムなのでかなりやばい。
まあそれはともかくとして、表現したいのは、主人であるとする薔薇を食べるにせよ、がちの人肉を喰らうにせよ、
自分の体の中に、愛する人の一部または全部をとりこんで、ひとつになる=永遠、永久
という愛のかたち なんだな、と。
SEXもある意味ちょっとそういう部分あるよな、と思いながら、ふと、カマキリは交配中に雌が雄を食べてしまう、っていうのを思い出すなどしました。

あと、少し余談だけど、氷雨丸で(ここからネタバレしますので未見の方は薄目で見て!色も薄くしとく(笑))、
徳川セラフィーマ様が、寵愛する常花非人である煌びやを、焼いて殺させた後、
その頭蓋骨を手に、「これでもう、私とお前はずっと一緒」ってうっとりと言いながら頭蓋骨の口にキスをする
そして自分の刀に骨をとりこんで、魂を半永久的に縛る
っていうのを思い起こしました。
食べてはいないけど、殺してとりこむ、は、ユウさんの中での、究極の「愛を永遠にする」ための、狂った手段のひとつなのだなぁと。
狂ってるとは、そのキャラクターはもとより、ユウさんも、微塵も思ってないかもしれないけれど。



【4】あの目隠しの表現していること
ひとつは、タイトル通り、盲るほどの愛、盲愛、を表していて、ご主人様以外何も見えなくなるほど使用人は愛に溺れてるってことだと思うんだけど、
もうひとつ、【3】に繋がる部分で、ご主人様を自分の身に取り込んでひとつになったからこそ、もう何かを「見る」必要など無くなってしまった、ということでもあるのかな。
もう、そこにあるのは2人きりの世界。
見ることも聞くことも、なにも必要がなくなっちゃった。
だって、ご主人様は自分の中にいるのだもん。
最後の笑み、不気味だしゾクッとさせられるけど、満足そうに微笑んでるとも見えるし、彼はこれで幸せになれたのでしょうね…。


【5】薔薇の花言葉
赤い薔薇の花言葉は「あなたを愛してます」「愛情」「美」「情熱」「熱烈な恋」「美貌」
さらに、本数によって変わるという話で。
ユウさんが、ググッてくださいと言っていましたが、なるほど。

1本だけ持っている時と、12本(かな?)抱えている時と…
服装が違うのもみそですよね。
そして2本。この世界に2人だけ。
その2本うちの1本の首がもがれる…

私にはあなたしかいないって花言葉も、最後にはまた違った意味を持つということかな。こわっ。

一途で、狂気的で、盲目的な愛の象徴。




ここまで長々とあれこれ書いたけど、なにはさておいても、大声で言いたいのはこれですね

「薔薇になりたい!!!」

(ほおら、ユウさんの手のひらの上コロコロ〜)

茎フェラーリ(byユウさん)のシーンがエロすぎて赤面してしまう…
茎…あれは人間の体なら、首筋なんでしょうか?
それとも、もっと下の…体?
目閉じてる時もえっちだけど、こう、目線を花に向けて舐め上げるところ…やばいでしょ
大喝采。
花びら1枚1枚口でちぎるところ…
服を脱がせているかのよう…
ブラボー!!!

こんなドアップで、推しのソロラブシーン(?)見れる日がくるとは。
まことにありがとうございました(五体投地)