AMAZ○Nで変なギアを買う前に…


「私物を使う上で知っておいてほしいこと」シリーズ第2回です。



今回は貴方が買うべきギアはどんなものが適切なのか?という、お話。






2. その性能は誰が保証するのか?

バッグの肩紐が千切れた?それPX品だからだよ


昨今、ネット通販の普及やサバゲーブームによって、様々なメーカー、ショップが私物装備を製作・販売するようになりました。



それはもうピンからキリまで

特殊部隊が使うようなポーチから、ホビーショップにも売ってる高校生が買えるサバゲー用品まで色々あります。



職業人として、私物を求める貴方はどんなギアを購入するべきなのでしょうか?


信頼性をとるべきか?入手しやすい価格をとるべきか?


その特徴を知ることで、何を手に取るべきか考えてみましょう!








私物にも様々な種類がありますが、性能面で考えると大きく4つの区分があると考えます。


(1)官給品(コントラクト取得品)

(2)官給品の民生型

(3)本職向け民生品

(4)一般人向け民生品


これらの大きな違いはなんでしょう?

これらの違いは

その性能を評価し、保証した人間がいるのか?

という点です。




(1)官給品(コントラクト取得品)

官給品(コントラクト取得品)」は、公的組織において広く使われることを目的として開発・製造されたものです。

その中でも「コントラクト取得品」とは、その製品を官給品として調達・管理する為に物品付与した固有番号(官給タグ)のことです。

つまり「THE 官品」ですね。

(U.S Army 放出品のTactical Assault Panel;TAP。それほど使いやすくはない)


その開発には、素材(マテリアル)の段階から製品の形となった段階まで、あらゆる試験が実施されます。

そして要求した性能を満たしていることを確認した上で採用されています。


平たく言えば、その性能について組織がお墨付きを与えている訳です。何らかの理由でチャチな場合もありますが…


ただし、官給品は「調達コスト」も重視して作られているので、微妙に使いづらかったり、あと一歩機能が足りなかったりする場合もあります。
強度は一丁前なのに使いづらいのはどこも同じ。

でも実物にしては安いんですよね。官給の放出品。
なので、「お金はかけたくないけど信頼できる私物を揃えたい」という方にオススメです。



(2)官給品の民生型
官給品の民生型」は、官給品と全く同じものが一般市場向けに販売されたものです。
違いはコントラクト(官給タグ)の有無や、使われている素材の違いだったりします。

(ミステリーランチのRATSパックを使用する隊員。元は米特殊部隊用である。)


陸自装備で言うところのかつて存在した「防衛庁共済組合品」の弾納やサスペンダーなどですね。

性能については官給品とほぼ同じですから、信頼できるものでしょう。
また放出品とは違い、新品を購入することも出来るので、破損や摩耗の心配もありません。

ただし、特に放出品においてはマルチカム、タン、コヨーテブラウン、UCP、RG、ウッドランドなど米軍やその国の迷彩しか存在しません。

ウッドランドやRGはともかく、その他の迷彩で日本の植生に合わせるのは難しいのではないでしょうか。



(3)本職向け民生品
本職向け民生品」とは、ギアメーカーが本職の隊員のために製作・販売している官給品ではないギアのことです。
一般的に「私物」と言われるものの多くはこれらを指します。
とりあえずこれ買っとけばマニアに馬鹿にされません。たぶん。


(みらい装備工房のチェストリグを使用する空挺隊員。一部官給品の縫製を請け負う信頼あるメーカー)


代表的なメーカーとして、国内ではL.E.M SupplyAggressor GroupA.O.S.Eなど、海外ではEagleBHIkarrimorなどがあります。

戦人CONDORなどもここに含まれたり、含まれなかったり…

これらのギアは官給品としては採用されていないので、公的組織による公式な性能試験などは行われません

しかしながら、素材に官給品と同じもの(いわゆるミルスペック品)を使って製造したり、官給品と同じ基準で縫製を行うなどして、官給品と同等やそれ以上の機能を有していると見なされています。

また、それらのギアを実際に隊員が使用してその問題点をフィードバックして改善することによって信頼性が担保されている、という特徴があります。

ただし、官給品に比べると生産数は少なく、隊員の要望に応えるため構造・機能に凝った作りをしていたりするため、相対的に単価は高くなります
海外ではブランド品とかけて「GUCCI Gear」なんて呼ばれたします。

とにかく自分の求める機能を備えた、信頼できるギアが欲しい!」と言う方にオススメです。



ちなみに「戦人」や「CONDOR」は、ミルスペック素材を減らしたり、民生品に変えることで、生産コストを抑えて製造・販売している比較的安価なメーカーです。

後述のサバゲーギアほどチープでもないですが、官給品に準ずるミルスペック品とも言えないため、人によっては本職向けギアに含めない場合もあります。

しかし、実際に多くの隊員が使っており、ある程度の性能は担保されている、と見ることも出来ます。
まあミルスペックじゃないんですが…

なので、「サバゲーギア買うくらいだったら、せめてCONDORとか買って…」という気持ちになるのが正直なところです。
言うなれば私物ギアの最低ライン?



(4)一般人向けの民生品
その名の通り、本職ではない一般人がサバイバルゲームその他の用途で使用することを想定して製造・販売されたギアを指します。
多くは先行する他社製品をコピーしたもので、一般的には「レプリカ」と呼称されます。

(英語でもローマ字でも不自然なショップ名のものが多い)


これらのギアは元より公的組織が官給品として使うことを想定していませんし、そのような素材も作りにもなっていません。
もちろん性能の試験もされていないので、信頼性は担保されていません。
中東やアフリカの発展途上国でなら紛争に使われてたりします。そういうギア。

ミルスペック素材も使っていないし、縫製も適当なので非常に安価です。



一部では、ミルスペック素材を使用したハイブランド品も存在します。

パッと見ただけでは本職向け民生品と見分けが付かないような丁寧な作りで、機能も同等であることが多い。
(親切なショップでは「○○タイプ」というような不思議なワードが用いられる)


(Pew Tacticalのチェストリグ。作りが丁寧なレプリカは価格も高くなる)


しかし、前述の通り性能は担保されていないので信頼性をとるならば避けるべきでしょう。
Pew tactialとCONDORだと難しいラインですが前者の方がいい場合もあるかも…?




今回は、私物ギアの性能を主眼に置いて書き連ねてきました。

いろいろ思うところはあるかもしれませんが、官給品の強度って馬鹿にならないところがあると思いませんか?

当たり前のように思うかもしれませんが、それも数多の試験をクリアした結果により備わっている性能なんですよ。

(戦闘装着帯,一般用の仕様書から抜粋した性能試験項目。様々な要素において試験が実施される)


翻って、私物が官給品のお堅い試験項目をクリア出来るのか誰も証明できません。

私物メーカーが外部機関に持ち込んでJISに則った試験やってるギアって見たことありますか?


では何を以て証明できるのかと言われれば、同業の使用実績とか製造ノウハウを持っているというブランド力です。


でも、そういうのってギアが好きなマニアとか、私物が盛んに使われている部隊に居たりしないとなかなか知り得ませんよね?


「陸自私物アーカイブ」は、そういうところを目的として始めました。


アーカイブを含めて、書き連ねた文章が誰かの知識として役立ってくれればいいかなと思っています。




大変長くなりましたが、今回はこの辺りで失礼させて頂きます。


それでは!