源氏と関わった女性たちのうち、実に7割が出家しています。
出家とは現世と絶縁して仏の道に入ることですが、
故・瀬戸内寂聴さんのように完全に剃髪して尼になる人もいれば、
在宅出家の人もいます。
この場合は長い髪を切っていわゆる尼削ぎ(あまそぎ)というスタイルですね。
いずれにせよ、出家とは簡単に言えば「男との縁を切る」という事です。
物語のなかで印象的な出家は、源氏と密通して不義の子を産んだ桐壺帝の中宮「藤壺」です。
桐壺院(皇子に帝位を譲ったので院となった)が崩御すると藤壺は三条の宮に退出します。
源氏は、断ち切れない思いから再び藤壺の寝所に忍び込みます。
藤壷は思い悩むのはもうたくさんとばかり出家を決意し、
桐壺院の1周忌のあとで行われた法華八講(ほっけはっこう)の結願(けちがん)の日に、
突然落飾して周囲を驚かせました。
ドラマ「光る君へ」の中で、定子中宮が弟の伊周の謀反の罪に連座して邸に退去した時、
押し寄せた貴族たちの一人の刀を抜いて、その刀で自分の髪を切って居並ぶ人々を驚かせたシーンがありました。これは「藤壺」のやり方のパクリですね。
次に印象的なのは後に源氏の正妻となった「女三宮」ですね。
源氏の親友・頭中将の息子である柏木に横恋慕されて源氏が留守の夜にレイプされて
懐妊、やがて男児(薫)を出産。
間もなく出家を望み、既に出家していた父の朱雀院から受戒し、出家を果たしたのです。
簡単に出家できた女たちは幸福です。
出家を強く望んでも果たせなかった女。それは源氏に最も愛された「紫の上」です。
紫の上は出家を望みましたが、源氏はこれを許しませんでした。
遂に彼女は病臥に伏し、最後は果物さえ口にできないようになって衰弱死します。
この時になって、源氏は出家を許さなかった自分を後悔し、自身の身辺整理を始めて
自分も出家してしまうのでした。
『源氏物語』は読み方を変えれば、出家物語なんです。
物語の中で印象的な出家は