ハ―イ。あたし清少納言。暑いけど元気?

夏は夜がいいわね。蛍がいっぱい飛んでいるのも素敵よ。あたしは蛍が飛び交う様子を描いたにすぎないけど、紫式部さんたら、蛍の光を美女のライトアップに使ったのよ。やるわね。

 

 源氏の君が35歳の時、六条院という壮大な屋敷を建てて、春夏秋冬の4つの町に区切り、春の町に紫の上と住んだの。

 

 夏の町には、玉鬘(たまかづら)という21歳の美女が引き取られてくるの。彼女の昔の名は撫子(なでしこ)。母親は夕顔。以前アップした「雨夜の品定め」の中で源氏の親友・頭中将(とうのちゅうじょう)が、女の子までもうけた愛人が黙って姿を消したことを恨んでいたわよね。その愛人が夕顔と名を変えてひっそり住んでいた所に源氏が通い始めたの。でも夕顔は源氏との情事の最中に急死しちゃったから、乳母は遺児となった玉鬘を連れて九州に行くの。その地で美しく成長した彼女に地元の権力者がしつこく言い寄るものだから、それを逃れて上京。

 夕顔を忘れられない源氏は、玉鬘をすぐさま養女にしたってわけ。でも、実の父親である頭中将には教えないの。

 

 大モテの玉鬘22歳。頭中将(今は内大臣)の息子である柏木は実の妹とも知らずに恋こがれ、源氏の弟の蛍宮は妻にしたいと願う。源氏も男として玉鬘が大好き。養父とはいえ父親だから玉鬘の部屋に自由に出入りできるの。それを良いことに愛撫なんかしちゃってイヤラシイったらありゃしない。

 

 彼女に届く恋文を源氏は全て開封し、蛍宮からの手紙に勝手に色良い返事を代作したから、さあ大変。当然、宮は大喜びで忍んで来ます。物陰に隠れていた源氏は折を見て、たくさんの蛍を玉鬘の顔のあたりに一斉に放ったの。その幻想的な光に映し出された彼女の美貌。息をのむ宮。宮の感情の高ぶりを観察していた源氏は「むひょひょ。もっと興奮しなよ。あ、ボクも変な気に……」とイヤラシげに楽しむんだから、もう最低。

 このシーン、蛍の光は、玉鬘の美しさとは対照的に源氏の品性の醜さを照らし出しているの。そしてこの帖は、ワルイ源氏、思いどおりの人生を送れなくなる源氏の序章なのよ。深いでしょ?