468ページもある厚い本。三浦しおんの『まほろ駅前』シリーズ第3弾。ところどころマンガ風のイラストがあって、それもイケメン2人なので目が引きつけられる。
物語は多田便利軒の新年から始まり、また新しい年を迎えるところで終わっている。彼女の小説はストーリー運びが上手く、そしてセリフの軽妙さにほっとしたり、笑わせられたり・・・。
チョット驚いたのは、多田が4歳の女児の手をつないだときの感想。「子供の手は、なぜいつも湿ってべたついているのだろう」という表現。確かに、子供の手はいつもしっとりというかべたついた感じがする。子供のいない作者にどうしてその手の湿度が分かるのだろう。おそらく、何かの機会に触れた経験があり、その記憶が鮮烈に残っていて、文章に活かしたのかもしれない。
大人の男性と幼い女児との会話、女児中心に生活のリズムが変わっていく様子などほほえましく、温かく、寒い季節に読むのにふさわしい。ドキドキハラハラも忘れないサービス精神もまた、GOOD。