上方落語「猫の忠信」は義経千本桜のパロディ!! | さきじゅびより【文楽の太夫(声優)が文楽や歌舞伎、上方の事を解説します】by 豊竹咲寿太夫


猫の忠信













今日は落語のお話です。

こんばんは、シェリーです



このブログは文楽の咲寿太夫
さきじゅだゆう
さんが文楽の魅力を、わたしが上方
かみがた
文化の魅力をお伝えするブログです。




今日のテーマは





猫の忠信








明治から昭和のはじめくらいにかけて、義太夫をやろうって人が沢山いた



いわゆる素人義太夫教室ね



文明開化して、女流義太夫(女義
じょぎ
)の人が増えた
のね。

江戸時代の間は女の人は禁止されていたから、一気に増えたのよ。



そしたら、その女義の人たちは教室を持つようになったの



それこそ、需要と供給


一つの街に少なくとも一つは義太夫教室があったそうよ。



浄瑠璃
じょうるり
を聞いていると、ああ、ええもんやなあ、やってみたいなあ

とそうなる。



自分でもやってみたいなあ、となったら、義太夫教室にいく。

するとそこのお師匠さんが綺麗な女義のお師匠さんだったら、モチロン鼻の下を伸ばして続ける



という風景がよくあったみたいで、落語でもよく描かれる風景。



この猫の忠信もそんなシーンから始まるの。



次郎吉(次郎貴)の通っている義太夫教室も、若い女義のお師匠さん。


次郎吉はこのお師匠さんに惚れているの



ちょうどこの稽古屋さんの面々で発表会をしようという段取りになっていたの。


演目は義経千本桜。



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絵巻「義経千本桜」



これを「通し」でしようというの。

相当な人数の生徒さんがいたんでしょうね。




そんな時に、次郎吉はお師匠さんには本命の男の人がいるという噂を耳にするの。



その本命の男の人というのが、常吉という人。

常吉はすでに結婚していて、奥さんもいるの。



そんな阿呆なことがあるか、と次郎吉は稽古屋を覗きに行く





障子の穴からこっそりとのぞくと、
まさしくそこにはお師匠さんと常吉が!!!

しかも肩と肩をぴったりと寄せて口移しでお刺身を食べているの!!!!




嫉妬した次郎吉はすぐに常吉の家へ行って、奥さんにそのことを話しにいったの。

すると、奥さんは一笑。


なぜなら、今の今までずっと常吉は家にいるという





すると、本当に奥の部屋から常吉が出てきたの!!



でも、さっき稽古屋でみたのは常吉で間違いなかった、と次郎吉は言い張るの。



それじゃあ、ということで、常吉の奥さんを連れてもう一度稽古屋へ確認をしに行ったの





するとどうでしょう


そこには口移しでお刺身を食べている常吉が!!!




奥さんが自分の旦那を見間違えるはずがないわよね



さっきまで家にいた常吉がもう稽古屋でお師匠さんといちゃいちゃしている現場を見て腹をたてながら家に帰ると、そこにはもう常吉が

「早いなあ」と次郎吉は漏らします。


常吉は奥さんに「おまえが見ても、わしやったか。最近わしをみて妙な噂をたてるやつが多かった謎がとけた」と言ったの。


それで、今度は常吉が常吉を見に行くと言い出したの。



常吉と隣だって稽古屋を覗いた次郎吉。


そこにはお師匠さんといちゃつく常吉の姿。

隣を見ると、そこにも常吉。



常吉もその覗き穴から現場を覗く。

「これは狐狸妖怪の仕業やな」





ということで次郎吉と常吉は稽古屋に乗り込んで、もうひとりの常吉に詰め寄ったの






「お前いったい何者やねん」

「申します。申します。

頃は人皇百六代、正親町天皇の御宇、山城大和二カ国に田鼠
でんそ
という鼠はびこり、民百姓の悲しみに、時の博士に占わせしに、高貴の人に飼われたる、汚れを知らぬ三毛猫の生皮をもて三味に張り、天に向いて弾くときは、田鼠直ちに去るとある。

私の両親は伏見院様の手許に飼われ、受けし果報が仇となり、生皮はがれ三味に張られました。

その時はまだ仔猫の私、父恋し母恋し、ごろにゃんにゃんと鳴くばかり、尋ね尋ねてその三味が御当家さまにありと聞き仮に常吉様の姿を借り受け、この家の内へ入り込みしが、あれあれあれ、壁にかかりしあの三味の表皮は父の皮、裏皮は母の皮。

私はあの三味の子でござります」


「ああ、猫やがな、こいつ。

エエ、猫が化けとったんや。

えらいことがあるもんやな」








猫ちゃんだったの!!!


お父さんとお母さん恋しさにお師匠さんの三味線に惹かれてごろにゃん(文字通り)してたのね


それを受けて、次郎吉は「今度の会は大当たり間違いなしやで」と言うの。


今度の会は義経千本桜。


野屋ので、義経。


猫はずっとタダ酒飲んでたから、猫のタダ飲む、狐忠信。



お師匠さんの名前は静さん、まさしくそのまま静御前。


するとお師匠さんが、わてみたいなのに静が似合いますかいな、と言ったら、猫ちゃんがすかさず言ったの。



似合う
ニャウ




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猫の忠信・五光




まさしく、義経千本桜の四段目そのままのパロディ。



パロディ部分を載せるわね。





「桓武天皇の御宇、内裏に雨乞ひありし時、この大和国に千年功ふる雌狐、雄狐。

二疋の狐を狩り出だし、その狐の生皮を以て拵へたるその鼓。

雨の神を諫めの神楽、日に向かふてこれを打てば、鼓はもとより波の音。

狐は陰の獣故、水をおこして降る雨に、民百姓は悦びの声を初めて上げしより、初音の鼓と名付け給ふ。

その鼓は私が親、私めはその鼓の子でござります」




義経千本桜の狐忠信は初音の鼓の皮が両親なの。



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ストーリーで楽しむ
文楽・歌舞伎物語(3)

「義経千本桜」


それを踏まえた猫の忠信。



互いの芸能の人気がうかがえる、面白いお話ね





シェリーでした














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