第29条から33条です。
いろいろな仕掛けがあります。

第二十九条(自民党案)

財産権は、保障する

財産権の内容は、公益及び公の秩序に適合するように、法律で定める。この場合において、知的財産権については、国民の知的創造力の向上に資するように配慮しなければならない。

私有財産は、正当な補償の下に、公共のために用いることができる。

 

第二十九条 (日本国憲法)

財産権は、これを侵してはならない

財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。

私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

 

自民党案は、為政者が国民に向かって言っている言葉。憲法は主権者たる国民が為政者に向けて言っている言葉。根本の意味が違うのです。

憲法を国民支配の道具にしようとする条文です。

 公共の福祉とは、公益及び公の秩序とは全くの別物であるのは、これまで解説してきたとおりです。

 公益及び秩序とは、為政者が勝手に定めることのできる、国民支配の道具です。

 公共の福祉とは、民主主義、立憲主義、平和主義の三つの主義の下、人々の幸福のためになされるものです。

第三十条(自民党案)

国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。

 

第三十条 (日本国憲法)

国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

 

 主語が大事です。

 国民が自分自身に対して規定しているのか、為政者が国民に強制しているのかが、はっきりわからなければいけません。日本語は主語を省略することが多いのですが、それでは改悪に利用されるだけです。改憲に際しては主語が誰であるのか、誰が誰に対して命じているのかを明確にしなければなりません。英語だと主語がはっきりするのですが。

 自民党に憲法の英訳をさせるといいですかね。

 憲法を国民支配の道具にするために、主語を国民から為政者へ変えるというのは、国家への反逆です。

第三十一条                         (自民党案)

何人も、法律の定める適正な手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない。

第三十二条

 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を有する

第三十三条

何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、裁判官が発しかつ、理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

 

第三十一条                      (日本国憲法)

何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

第三十二条

何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない

第三十三条

 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

 

 これらの条項も主語を明確にする必要があります。

基本的人権に制約を付けようとしている自民党は、32条の意味を変えています。

「裁判を受ける権利を有する。」「裁判を受ける権利を奪はれない。」とでは、意味が全く違うのです。権利を有していたところで、「公益及び公の秩序」に反すると判断すれば無視できるのです。権利を奪われないとは、基本的人権であるからいかなる理由があろうとも権利を有するという意味です。