第67条から第71条です。
 ここでは、国会の議決を無視するという改憲条項になっています。


第六十七条                    (自民党案)
 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会が指名する
国会は、他の全ての案件に先立って、内閣総理大臣の指名を行わなければならない。
衆議院と参議院とが異なった指名をした場合において、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が指名をしないときは、衆議院の指名を国会の指名とする。
第六十八条
 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。この場合においては、その過半数は、国会議員の中から任命しなければならない。
内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。


第六十七条                   (日本国憲法)
 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。
衆議院と参議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
第六十八条
 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。
内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。

 

 議決がなくても、指名だけで内閣総理大臣になれるのが、自民党案。国会で議決をして、指名を決定し、総理大臣を指名するのが日本国憲法。

 違いますね。

  議決というのは、議論してという意味でしょうから、国会という国政についての話し合いをする機関でみんなの意見を出し合い、決めましょう、という意味になります。

  自民党案は、国会などどうでもいいという案ですか。



第六十九条                   (自民党案)
 内閣は、衆議院が不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
第七十条
 内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員の総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は、総辞職をしなければならない。
内閣総理大臣が欠けたとき、その他これに準ずる場合として法律で定めるときは、内閣総理大臣があらかじめ指定した国務大臣が、臨時に、その職務を行う。(新設)
第七十一条
 前二条の場合には、内閣は、新たに内閣総理大臣が任命されるまでの間は、引き続き、その職務を行う。


第六十九条                   (日本国憲法)
内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
第七十条
 内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない。
第七十一条
 前二条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ。


 自民党案の第70条第2項、何かおかしくありません?

 第70条第1項「内閣総理大臣が欠けたとき、内閣は、総辞職をしなければならない。」

70条第2項「内閣総理大臣が欠けたとき、その他これに準ずる場合として法律で定めるときは、内閣総理大臣があらかじめ指定した国務大臣が、臨時に、その職務を行う。」

71条「内閣は、新たに内閣総理大臣が任命されるまでの間は、引き続き、その職務を行う。」

この3つを統合してみると、

 「内閣総理大臣が欠けた時には、内閣は総辞職をしなければならないが、新たに内閣総理大臣が任命されるまでの間は、内閣は引き続きその職務を行い、その際には、内閣総理大臣があらかじめ指定した国務大臣が、臨時に、内閣総理大臣の職務を行う。」となりますね。

 日本国憲法では、「内閣総理大臣が欠けた時には、内閣総理大臣が行うべきことができなくなってしまうので、内閣は総辞職をして、国会における議決を経て、内閣総理大臣を指名し、新たな内閣を作ってください」という、日本国民の命令になっています。

 自民党案では、「あらかじめ内閣総理大臣が指定」するだけで内閣総理大臣が行うべきことができる、ことになります。国会の議決による指名がないがしろにされているということになります。