酒道楽、毎日がお祭り…。 人に歴史あり……何かをやり遂げた人物の、そこに辿り着くまでの色々(特に苦労したことなど)を語るときに用いられるワード。私が“記者Y”になるまでにもやはり色々なことがあったが、その“色々”のまさに“い”の部分で出逢った若き料理人が居た。当時はまだソロで表舞台を踏む域にはなく、厨房で焼き方、煮方などを司っていた。

 

 

 

 

 

 

 


酒道楽、毎日がお祭り…。 “いずれは自分で店を仕切るのが夢です”と述べる彼に“そのときは必ず取材に伺います”と返す記者……まだ青かった二人が交わした約束。まあ、約束というよりエールに近かったような気はするが、彼の力強い言葉に可能性を感じたものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


酒道楽、毎日がお祭り…。 それから歳月を重ね経験を重ね、その若き料理人は佐伯港を背に佇む居酒屋に居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


酒道楽、毎日がお祭り…。 大切な人と呑む喜びを感じていただきたい……呑む喜び……のむ喜……のん喜。佐伯寿司、佐伯ごまだし、佐伯ラーメンよろしく“佐伯地魚”と名乗るところが新しいその店の、厨房越しではなくカウンターを介して……要するに店を仕切っていた、約束どおり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


酒道楽、毎日がお祭り…。 でっ、早速、料理の実力。いきなり“冠”のついた真サバ(豊後さば)刺しでド肝を抜かれることになる訳だが、その前にこの夜いただいた他の料理をご紹介する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


酒道楽、毎日がお祭り…。 まずは酢かき

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


酒道楽、毎日がお祭り…。 牡蠣は色々あって火を通していないモノを供するのは度胸がいるが、レバ刺しの抹殺を阻止する焼肉屋の如く、牡蠣を生で供する姿勢は酔っ払い料理記者的には頼もしく思える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


酒道楽、毎日がお祭り…。 ただ、贅沢を言うなら日本酒のグラス売りをやってもらいたい。多彩な日本酒と料理(特に酢牡蠣)のマリアージュを考えるとそのくらいが丁度良いからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


酒道楽、毎日がお祭り…。 次は生タコカルパッチョ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


酒道楽、毎日がお祭り…。 タコを生で食す機会は実は少ない。味わいとしてはイカ刺しと大差はない気はするが、噛み締めている内にイカのそれとは違う旨みを捉えられるはず。ドレッシングの味がしつこくないところが特に良い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


酒道楽、毎日がお祭り…。 次はサザエのエスカルゴ風

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

酒道楽、毎日がお祭り…。 居酒屋でサザエと言えば刺しか壷焼きが相場だが、ここは約束の場……普通な訳はなく供された景色だけでも味わえる仕掛け。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

酒道楽、毎日がお祭り…。 もちろんリアルな味わいがそれを上回ることは言わずもがな。貝特有の磯の香にガーリッキーな太い風味が融合し酒を進ませる。フックラと焼き上げられた身肉も出色だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


酒道楽、毎日がお祭り…。 あと、記者NG(アレルギー)のエビ塩焼も同行者が調査してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


酒道楽、毎日がお祭り…。 味わいは“おいし~”としか言わなかったが、食していた顔からそのグレードが高かったことは想像に難くない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


酒道楽、毎日がお祭り…。 次はある技法で手当された真サバ(豊後さば)を酢〆し、それを種に握った〆サバ鮨

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


酒道楽、毎日がお祭り…。 〆加減が絶妙でサバの旨さが消されていない。酢飯も甘すぎずバランスが非常に良い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


酒道楽、毎日がお祭り…。 確かに江戸時代のファーストフードから昇華的に階層を飛ばし超高級料理になってしまった“江戸前”とは違う“すし”ではあるが、むしろ江戸っ子の心意気を踏襲するが如く“寿を司り”“魚を旨くするために”握られたのは“佐伯前”の方が近い(実は他県にもそのような型が多いのでは?)と記者は考える。“すし”が“上品なだけのもの”と思っている方は一度“佐伯前”をご堪能あれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

酒道楽、毎日がお祭り…。 でっ、勿体ぶって引っ張った最初の一品が神経〆真サバ刺し。“神経〆”とは魚を一本釣りしたのち、眉間のあたりから串状の鋭利な金具(千枚通し等)で魚の神経を一瞬に断ち切る技法。

 

 

 

 

 

 





 


酒道楽、毎日がお祭り…。 通常、〆てすぐのコリコリした食感、あれは死後硬直ゆえの硬さで、甘さや旨みはほとんどない。神経〆は魚自身が死んだことを悟っていないから身肉は柔らか……というか、魚って生きているときは“コリコリ”じゃないんだと何となく不思議な気持ちになった。

 

 

 

 

 

 


酒道楽、毎日がお祭り…。 味わいはまず背身の部位だけで驚かされる。熟成させたかのようなシットリとした舌触りとホンノリした甘さを身肉に宿し、これホントに背側?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


酒道楽、毎日がお祭り…。 腹身に至ってはおよそサバが放つものとは思えぬ甘さ。とにかく伝わってくるものが柔らかで青物っぽさがない。あっ、どうしても青っぽく感じてしまう方はワサビではなくショウガを試されよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

酒道楽、毎日がお祭り…。 さて、この夜いただいた真サバ刺し、旨さの秘密が魚の手当(神経〆)にあるのか、個体にあるのか、あるいは記者の体調がたまたまそう感じさせたのかどうかは分からない。ただ、遠い約束を果たした彼から供された一品に違いはなく、屋号のとおり呑む喜びがいつも以上に頬に現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


酒道楽、毎日がお祭り…。 そう言えば鮨割烹・第三金波にも同じような約束をした若武者が居るが、彼の仕切る店を取材するのはいつになることやら……そのときは必ず取材に行くから。(画像は海の宿なるみで彼が握っていた鮨)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


酒道楽、毎日がお祭り…。 とりあえず一つの遠い約束、コンプリート。

 

 

 

 

 

 

 

 

取材日 平成24年3月

 

 

撮影場所 佐伯地魚 のん喜

0972-28-5178

大分県佐伯市葛港

18:00~23:00(LO22:30)

不定休