■大晦日は【旨口吟醸酒】と珍味で。 | ■日本酒と料理の相性を愉しむ…■

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●季節ごとの日本酒とお酒のアテとの相性を愉しむ【お酒の歳時記】です… ●

【菊姫 加陽菊酒 吟醸酒

■【利き酒師世界一】のひとり言■ このお酒のデータは…
蔵元
 菊姫合資会社(石川県,白山市)

特定名称 吟醸酒

原料米 兵庫県吉川町産「AAA山田錦」

 (精米歩合55%)

酸度 1.2 アミノ酸度 ?

日本酒度 +7

アルコール度 17~18%

酒造年度 ?
【とっておきの旨酒】で

行く年来る年。 

 今年のお店の営業は29日で終了したのですが、翌30日は月末仕事と各種雑務でお店に顔を出し、大晦日の今日からようやくゆっくりと休みに入ることができました。
 

 昼過ぎから、近所の食品スーパーに年末年始用の食料を買い込みに出かけたのですが、あまりの混雑ぶりに驚いてしまいました。

 冷静に考えると、そのスーパーは新年は2日から営業を開始するので、大晦日の夜と元旦の一日分の食料を買い込めば良いだけの話なのですが、人間の心理としてついつい沢山の食料を確保しないと安心できないのかもしれません。

 そんな中で、年末年始はずーとお酒を呑み続けるつもりの為、おせち料理などには目もくれずに、普段はあまり買わない珍味系を中心に、おつまみを色々と買い込んできました。


 さて、夕方までに部屋の大掃除も一通り終えて、我が家の日本酒貯蔵庫(大型冷蔵庫の野菜庫)から今宵呑む酒を選んでいたのですが、やはりこんな時にはとっておきの「うま酒」とういことで、

 大晦日のお酒は【菊姫 加陽菊酒 吟醸酒】です。

 このお酒は、「加賀の菊酒」で知られる「菊姫」から出されている吟醸酒なのですが、蔵元の言葉を借りると、「実際に呑んで旨い吟醸酒」を目指して造られているそうで、スペック的には兵庫県吉川町産の特A「山田錦」のみを55%まで磨いてを使用し、小仕込みで醸された後でさらに熟成をさせるという、菊姫独特のこだわりが貫かれています


 まず色調は、炭素での濾過を極力抑えているので、「やや濃い目の黄金色」です。

 香りは、「黄色のりんご」を想わせるほのかな果実の香りと、「栗の薄皮の様な穏やかさを感じさせる香り,さらには「干し椎茸」を連想させる微かな熟成香が加わって、「控えめだがやや複雑性を感じさせる香り」といった印象を受けます。

 味わいは、ほんのりとした甘味とシャープさを感じさせる酸,そしてきめ細かな旨味の調和が上品に取れており、後半には少し苦味も感じられます。

 余韻にはしっかりとしたインパクトがあり、舌の上にアルコールのボリューム感も残ります。

 全体的には、「飲み口はスムーズでありながら、後口には充実感を感じるお酒」で、菊姫の蔵元がこのお酒を「旨い吟醸酒」呼んでいるのが頷けるような気がしました。

 今回は、珍味系のおつまみを数品用意しましたが、■【利き酒師世界一】のひとり言■

 まず日本酒を呑むときに外せない珍味として、

【からすみ】からです。


 より味わいを愉しむ為に、包丁で薄くスライスして合わせてみましたが、「からすみ」の濃い旨味と程好い塩味に、「菊姫 加陽菊酒」の上品な甘味とシャープな酸が加わることによって、「旨味,塩味,甘味,酸」という4つの味が完成する感覚で、期待通りの美味しい組合せでした。

 ちなみにこのパターンは、吟醸酒とイタリア産ブルーチーズの「ゴルゴンゾーラ ピカンテ」を合わせた時の相性の良さと、何となく似ているような印象を受けました。


■【利き酒師世界一】のひとり言■  次にこれまた珍味としては定番の、

【境港直送のかにみそ】を試してみました。


 こちらもご存知のように濃厚な旨味を伴った珍味ですが、口の中で「かにみそ」の濃い味わいが「菊姫 加陽菊酒」にキレイに溶けてゆき、それでいて後からカニ独特のフレーバーがふわっと広がってきます。

 これ以外にも、【チャンジャ】(鱈の塩辛)【ほたるいかの沖漬け】etc.の、いわゆる珍味系のおつまみで色々攻めてみましたがどれとも相性が良く、「滑らかだがインパクトがある」という「菊姫 加陽菊酒」の持つキャラクターが、料理との比較的幅広い相性を可能にしているように思われました。

 ただし、17%を超えるアルコール度数は、やはり食中酒として呑み続けていると強すぎる感があり、途中で「和らぎ水」(ミネラル水)の助けを借りる必要がありました。


 最後にもう一度この蔵元の言葉を借りると、「菊姫」では「純米酒」では「芳醇で豊かな味わい」を追求し、「吟醸酒」では上品な「吟味」を重視しており、この2つは酒質的に相容れないと考えている為に、「純米吟醸酒を造ることは考えていない」そうです。

 この蔵元のこだわりについては賛否両論が分かれる所だと思いますが、ここでは敢えて何もコメントせずに、このまま呑み続けながら年を越したいと思います…。