【菊姫 鶴乃里 山廃純米限定酒】
このお酒のデータは…
●蔵元 菊姫合資会社(石川県,白山市)
●特定名称 山廃純米酒
●原料米 兵庫県吉川町産「AAA山田錦」
(精米歩合65%)
●酸度 非公開
●アミノ酸度 ?
●日本酒度 ?
●アルコール度 16.0%~」17.0%
●酒造年度 H19BY
フランスのコンクールの
【最優秀賞酒】を呑む。
10月に入ってひと雨ごとに秋の装いも深まり、各地からは紅葉の便りも聞かれるようになってきました。
各酒蔵から次々と出荷される「ひやおろし」を呑みながら、秋の夜長に何か変わった日本酒はないものかと、WEBサイト上のSAKE SHOPを物色していたところ、チョット気になるお酒を見つけ、思わずクリックして購入してしまいました。
それは、IWC(インターナショナルワインチャレンジ)の「最優秀賞 受賞酒」として紹介されていた、
【菊姫 鶴乃里 山廃純米限定酒】です。
IWCとは、毎年ロンドンで開催されているヨーロッパ屈指のワイン品評会で、昨年の4月から「SAKE」部門が新設されたのですが、このお酒はIWCに出品された全ての日本酒の中で、外国人のプロワインテースター達によってトップに選ばれたというお酒なのです。
この「菊姫 鶴乃里」は、「山田錦」の中でも特上と言われる特A吉川地区のAAAクラスのお米を65%まで全量自家精米し、寒造りの山廃仕込みで醸したお酒を、瓶詰めした後で熟成させたという、まさに「こだわりの日本酒」で、これが海外のワインコンクールで評価されたということも頷ける気がします。
まず特筆すべきは、熟成により「黄金色に薄化粧」した美しい色合いです。
香りは昔、学校給食で食べた「玄米パン」を想わせるような穀物類の香りに、「きのこ類やスパイス類」etc.の様々な香りが加わり、さらにほのかに「干し海老」を想わせるような熟成香も加わって、全体としては「ふくよかで厚みのある複雑な香り」が感じられます。
口に含むと、非常に豊かな酸のインパクトに旨味が滑らかに乗っていて、やや控えめで自然な甘味と共に心地良く全体の調和が取れています。
後口もしっかりしていて、長い余韻にほのかに熟成のフレーバーが加わり、「力強さと共に奥深さを感じさせる味わいのお酒」でした。
もちろん40℃位のぬるめの燗酒にしても呑んでみましたが、お燗にすることによって「豊かな酸に旨味が乗っている」というこのお酒の特徴がより一層引き立ち、絶妙の味わいでした。
ヨーロッパのワインコンクールで賞を受けたお酒ということで、今回は敢えて和食ではなくチーズと合わせてみたくなり、事前に新宿のデパ地下のチーズ売り場に出かけ、売り場のスタッフにワインではなく「山廃純米酒」に合わせるチーズを探している旨を伝えたところ、それならばと紹介されたのがこのチーズ、
【カベクー・フォイユ】です。
このチーズはフランス南西部のシェーブル(山羊)チーズで、メダル型のチーズに砕いた黒胡椒をまぶし、それをプラムの蒸留酒に漬けてからプラタナスの葉で巻いたという、とても変わったタイプのチーズで、実は私も今回初めて食べるチーズなので、まずはチーズ単体で味わってみることとしました。
チーズを包んでいる容器を開けると、「シソの葉で漬けた梅漬け」のような香りが広がり、味わいはシェーブルとしては比較的酸味が穏やかでクリーミーなのですが、それに黒胡椒のスパイシーさとプラムのお酒のフレーバーが加わることによって、非常に複雑な味わいを醸しだしています。
恐る恐る「菊姫 鶴乃里」と合わせてみると、お酒の複雑なフレーバーと奥深い味わいに、「カベクー・フォイユ」のこれまた二重人格者のような複雑な味わいが組み合わさることによって、口の中で次から次へと両者の味わいが変化し、最後には果たして相性が良いのかどうか?も判らなくなってしまいましたが、どうやら黒胡椒のフレーバーだけは、お酒に対して少し強すぎるように感じました。
そして今回はもう一つの「酒の肴」として、昨年の3月頃に新聞の記事で目にして気になっていた、菊姫の蔵元から出されたDVD
【菊姫歳時記】
をNETで探して購入し、深夜にこのDVDを肴にしながら、「菊姫 鶴乃里」をつまみ抜きでチビチビと愉しんでみました。
このDVDは、四季折々の映像を織り込みながら、「菊姫」の酒造りの一年をまとめたものなのですが、現在のハイテク技術と昔ながらの手造りを、見事に融合させた酒造りが良く判ると共に、「精米し蒸された米」と「完成した米麹」の映像の美しさには、思わずため息が出てしまいました。
それにしてもDVDとは言え、造り手の想いやそのお酒が出来上がるまでのストーリーを知った上でお酒を呑むことによって、同じお酒の味わいがこんなにも愛おしくかつ美味しく感じられるとは!
我々利き酒師がお店でお客様にお酒を提供する際に、そのお酒の持つ魅力やストーリーを平易な言葉でお客様に伝えてゆくことの重要性を、再認識させられたような一夜でした…。