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この本は、現代の日本ではほとんど使われなくなった、古い日本語が紹介されています。
言葉の響き、言葉から想像される情景、心情が優しく、柔らかい気持ちで心に思い浮かべることができ、日本人の美意識って本当に素晴らしいな、と再認識しました。
紹介されている素敵な言葉は、「あぶらでり」、「うすらひ」、「おさがり」、「かぎろひ」、「くさまくら」、「こはるびより」、「こもりく」、「したもえ」、「はなぐもり」、「みをつくし」などなど。
なんとなく意味が分かる言葉もあれば、まったく聞いたことのない言葉もあります。
その言葉を、中西進先生が詳しく解説してくれます。
中西先生は、万葉集を始めとする古典研究の大家で、「令和」の名付け親と言われている先生です。
この先生の書かれる文章が、実に優しく、思いやりのある柔らかい文体で分かりやすく、きっと先生のお人柄なんだろうなぁ、と想像しています。
私が小学・中学生のころは国語や古文が大嫌いでしたが、中西先生に教えていただいていれば、大好きになったのかな?それとも私が年をとったからかな?
各言葉をとりあげ、言葉の解説だけでなく、先生独自の視点や感想がユーモアを交えて添えられています。その部分が私は大好きで、先生の考えに触れると気持ちがほぐれていく感じがします。
また、この本のもうひとつの特徴は、綺麗な写真が数多く収められていることです。
見開き2ぺージで言葉の解説があり、その次のページ、または前のページ見開き2ページにその言葉を表す写真が掲載されています。
例えば「かぎろひ」は、「太陽が山の端から出た瞬間の曙光(しょこう)」と解説され、ページをめくると、に山の影から放たれた朝焼けの赤い光が山の稜線から上空に向かっている写真が掲載されています。
もう一度ページを戻って「かぎろひ」という題目を確認し、再びページを繰り改めて写真を見る。
先生の解説で気持ちが柔らかくなり、写真で情景に感動する(´∇`)
「かぎろひ」という言葉は使われなくなり久しいですが、いにしへの日本人の美意識を改めて感じることができました。
平安時代の清少納言は「枕草子」で、鎌倉時代の兼好法師は「徒然草」で、近頃の言葉遣いは情けないと嘆いている箇所があるそうです。
言葉の変化はいつの時代にもあります。
先生がまえがきで述べられています。
変化を認めながら、下品な流行語は使わず、大昔のものに固執せず、一歩遅れたところでことばを使うと、これはみごとなばかりに美しいことばの使い手となる。
じつは人間の品というものはすべて「一歩遅れ」にあるのだから。
私はもう、50代目の前のおじさんです。
若者の手本となる、美しい日本語の使い手になれるでしょうか。