平成28年産の総括(追記あり) | さかたのみかん

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みかん農家として独立したので、タイトルを変えました。
家業は相変わらず、肥料屋です。

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28年産みかんも来週の残り一回を残すだけになりました。

 

明日から、畑仕事に戻ろうと思います。

 

今日は備忘録の意味も含めて総括しようと思います。

 

平成28年は九州は不作の年になり、更に天候に悩まされました。

 

まずは1月の大寒波の襲来。(参考記事 大寒波による水道管破裂と断水について

 

今のところ、今年の冬は年末から暖冬の感じですが、あの時は水道管の凍結により破裂して大牟田市には自衛隊が派遣されたくらいです。

 

2月ごろにはまだ影響は出ていませんでしたが、4月に見た様子は熊本の標高が高いみかん山の木は枯れてるものも相当目立つくらいでした。(参考記事 大寒波の影響が色濃く出てます

 

幸いにも大牟田のみかん山は標高が低いので目立った被害はありませんでしたが、目立ってないだけで実際には樹勢が落ちていたので、花がとまらなかったのではと思います。

 

いつもは3月にスターライト1号(三要素+微量要素)と敬グリーン(アミノ酸)の葉面散布を3回行って樹勢を戻すんですが、切り上げ剪定の効果を確認したくて去年はやりませんでした。

寒波のことを考えればやるべきでした。

寒波の被害に遭ってる畑に比べればマシだという思いが油断を招いたのだと思います。

 

その後は順調に進みましたが、梅雨末期の豪雨により農道の崩壊に遭い黒点病の防除が一回できない畑が出てしまいましたが、その割には綺麗なみかんができたのは不思議に思いましたが、黒点病は防除の回数ではなく、まずは畑の環境だろうと改めて実感しました。

 

しかし他の畑も過去最高に綺麗なみかんができたのは、6月のカイガラムシの防除のことを考えて1回目の黒点病防除を5月下旬に変えたことが理由なのかと思っています。

 

今までは6月初旬に防除していたために、2回目を急ぐ必要は無いと考えていたことがあまり良くなかったのでしょうね。

 

本格的な夏になると、梅雨末期の豪雨が嘘のように大干ばつ。

 

全く雨が降らずに年齢が若い木は枯れてしまったものも出てしまいました。

 

摘果で実を触ると、萎れてしまっている物も多くありました。

この時点では玉太りも悪いだろうと予想しましたが、9月になり程よく雨が降ってくれたので、弱っていた木の樹勢も戻り、玉太りも進みました。

 

「植物は肥料ではなく、水とホルモンで動いている」と提唱している方がいますが、それを実感した瞬間でした。

 

その後、年末までの降雨は程よかったために、夏場の干ばつで上がった糖度が極端に落ちることなく、収穫も極端に遅れることなく年末を迎えられたのは良かったです。

 

収穫、出荷期を迎え、市場や直売を通していろんな意見を毎年いただきますが、28年産の味は自画自賛するほどおいしかったです。

 

うちは5ヵ所の畑で栽培していますが、その中の二つの畑の早生みかんが特においしかったです。

 

直売で購入してくれた方も、「あのみかんはまだある?」と何件も問い合わせをいただきました。

 

しかし、前述のように絶対数が少ないことと、今年の販売の特徴として新規に始まったスーパーとの取引量が多かっために、「あのみかん」があっという間になくなってしまったのは大きな反省です。

 

また、「あのみかん」は若木が枯れるほどの大干ばつだったからこそ、今年の味になったわけです。

タイベックを敷いて水分ストレスを意図的に与えるまでもなく、自然がその役割を果たしてくれたわけですね。

いわゆる、異常気象の下にできた味です。

「あのみかん」の味を、「ただ甘いだけではなく程よく酸味があって、このあたりのトップの方のよりもおいしい」と言ってくれる方がいたのは嬉しかったですが、個人的にはそんなに木をいじめないとできない味を目指すべきではないと志を新たにしました。

 

もう一つは、微量要素が効いていると貯蔵したほうが味が増すということが分かったことです。(参考記事 微量要素の必要性(食味編)

 

試食してもらった方は、わざと時間を置いてくれていたようですが、最初に食べた味と、期間を置いた味と比べると当初の印象を覆すくらい味が上がってるので、是非蔵出しを検討されたほうが良いとアドバイスをもらいました。

 

反省点も当然あります。

 

うちのみかんはカルシウムが足らないようです。(参考記事 微量要素の必要性(石灰不足編)

 

葉面散布のおかげなのか、畑の特徴なのかうちは比較的浮皮が少ないですが、3年前だったか浮皮の多発で泣きそうになったことがあります。

その時は、9月からのリン酸の散布回数を増やそうと思っていましたが、それがカルシウム不足だったとは良い勉強をさせてもらいました。

 

私は今までカルシウムのことが思考の中に全くありませんでした。

 

過去に「カルシウムが浮皮軽減になる」ということで全国で流行ったことがありますが、私が知る限りではその効果はほぼ皆無。

もちろん、効果が出ているところもあったでしょうが、カルシウムのことを知ると収穫前の散布ではなく、春の石灰施肥も含めて必要な時にカルシウムが効いているということなんでしょう。

 

そんな例を見聞きしてきたので、生育に必要なカルシウムを頭から外してしまっていました。

 

カルシウムを葉面散布で補給する方法を資材を含めて構想はありますが、それが正しいのか着蕾までには結論を出さなければいけません。

 

これらを基に29年産は更なる飛躍を目指します。

 

(追記)

 

今日になり書き忘れていたことがありました。備忘録としての役割もあるので別に追記します。

 

【害虫】

 

今年は一部の畑にヤノネカイガラムシを入れてしまいました。

27年に極一部に入っていることは確認していましたが初めての経験だったので、枝の除去だけで大丈夫だろうと油断していました。

29年は3月の葉面散布にマシン油を混用することから始めます。

 

【微量要素について】

 

微量要素の必要性については上記しましたが、液肥メーカーとして訴えていた通り、「収穫前だけ散布しても何の意味もない」ということが実証できました。

それは花の時期に「とめたい」という理由だけで散布するのも全く同じでしょう。

 

今まで三要素+微量要素の液肥は三要素だけの液肥に比べると価格が高いために、他社に移られたり、自然とやめる農家さんがいました。

微量要素を他の手段で供給するのなら問題ないですが、それもしないでうまいみかんを作ろうとするのは間違いですね。

 

【切り上げ剪定について】

 

当初の予想通りと言えばそれまでですが、着果や樹勢維持のためには非常に有効な剪定だと体感していますが、これにより味が上がるまではいかないようです。

有葉果が増えるのでじょうのうは薄くなるので、口当たりは良くなりますが、それまででしょう。

やはり味を上げるための管理は別に必要です。