では、前回書いたとおり、先週の出張について書こうと思います。
特に、三ヶ日での話が中心になりますので、あしからず。
今回は初めて、和歌山から以北へ足を伸ばしました。
特に三ヶ日にはとむさん
、なべけんさん
、みかぴんさん
がいらっしゃるので、是非ともお会いしたい気持ちが強かったです。
3人共にほぼ同世代であるということもあり、いろんな話に花が咲きました。
その中で、「可給態リン酸」について、質問がありました。
以前、「環境に優しい農業」という表題の下に行われた講演で、「土壌中には可給態リン酸が多量に存在するから、別に肥料でリン酸を補給する必要はない」というお話を聞かれたそうです。
これについて、
「これは本当なのか?肥料屋でも同じようなことを言う者と、可給態は確かに存在するがきちんと肥料はやらなければという者と両方いるが」
という質問でした。
その場では、肥料屋の経験として、後者の方でなければならないという答えをしました。
実際に、その話の通りに肥料によりリン酸を補給しないという例を見聞きしたことがないということもあります。
そこで、今日、専門家に聞いてみました。
福岡の肥料研究所のようなところです。
答えは、『肥料はきちんとやらなければならない』ということでした。
以下はその研究所員の方が言われた言葉です。(言葉がちょっと重複しますが、そのまま書きます)
確かに可給態リン酸は存在し、それは根酸により分解されて吸収されます。
しかしその根酸によりどれだけの量が分解されてどれだけ吸収されるのか、研究段階ではあり、まだわかりません。
では、その根酸がどんな環境でどのくらい出るのかも、極めて弱酸性の状態でなければいけないということはわかっていますが、それがどの程度のことなのか、PH以外の環境がどのようになければいけないのか、まだはっきりとはわかっていません。
ですから、どのくらいの可給態リン酸を吸収するのか、方向性というか、ある程度のことは想定できていますが、まだまだ研究段階なのです。
リン酸は過剰障害が出にくい成分なので、きちんと補給しないといけませんよ。
これって、結局はまだ何もわかっていないに等しいのではないでしょうか?
後付の理論かもしれませんが、仮に可給態リン酸を吸収するとし、肥料によるリン酸を補給しないとしたら、いつの日にかリン酸が欠乏するはずなんですよね。
では、それも含めて、
肥料によるリン酸補給をストップしていいのは何年間なのか?
どのくらいの可給態リン酸になったら、どの程度の補給をしなければいけないのか?
これがわかってなければ、肥料による補給を止める事なんて不可能なんじゃないでしょうか?
「土壌中に残っているから」という理由で肥料による補給を止めさせようとする人は、そんな話までするでしょうか?
私は、そんな話まではしないと思うんです。
だって、不可能だからです。
根酸の分泌量と言うのは、樹勢と深い関係にあるんじゃないかと思います。
仮に1反の畑全面が全く同じ土壌環境だったとしても(そんなことあり得ませんが)、特に果樹は木それぞれの樹勢が絶対に違うはずです。
その樹勢の差にはある程度の基準があると思いますが、そんな一本一本状態が違う木に対して、どれだけの可給態リン酸が吸収されるかなんて数字を出すことなんて、そんな話聞いたことありません。
だから、まだ研究段階なのでしょうね。
なべけんさんがおっしゃっていましたが、この可給態リン酸の話は上記もしたように、「環境に優しい農業」という表題の下に出てきた話です。
裏を返せば、『肥料をやっている農家は環境破壊をしている』という捉え方もできます。
それは明らかにおかしな話です。
こんな話がまかり通ってしまったら、日本の農業は終わりだと思います。
どうでしょうか?今回の話は結構参考になったんじゃないですか?
私自身も、今まで経験上話していたことが、きちんとした言葉として聞くことができて、とても参考になりました。
肥料、特に土壌に散布する肥料は人間で言うところの主食(日本人なら白米)です。
人間がバランスの良い食事をしなければいけないのと同じように、主食はきちんとあげましょう。