少女の悪夢 濫觴 / 黑猫 | 安眠妨害水族館

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少女の悪夢 濫觴/黑猫

 

1. 少女の悪夢-始まり-se

2. 憂囚-居場所のない少女- (2023 Remaster)

3. 踏切

4. 無間地獄の旅支度 (2023 Remaster)

5. 流血ドアスコープ (2023 Remaster)

6. 浅草エピローグ

7. 追想メランコリー (2023 Remaster)

8. 濫觴

9. 懸想流水

10. 哀話

11. 傀儡-kugutsu- (2023 Remaster)

12. 向精神薬

13. 少女不乱カタストロフィ

14. 116号室のキミ

 

始動間もない中で発表された、黑猫による14曲入りのフルアルバム。

 

ライブ会場、およびデジタル配信でのリリースとなっていましたが、通販も解禁。

無料配布盤となっていた「少女の悪夢-始まり-」からも、全曲収録。

歌モノについては、リマスタリングが施されていて、これが完全盤ということになるのでしょう。

 

和の要素と、正統派のダークネス。

これをアングラテイストでブレンドした、ヴィジュアル系のハイブリッド的なサウンドが詰め込まれています。

ヘヴィネスはしっかりと、不協和音を織り込んでの味付けも効果的に。

ロックテイストが強めの楽曲も、歌謡曲調のじめじめ感も、高いクオリティでこなしてしまう。

作詞・作曲を担当するGt.ヒナタさんのセンスの良さが顕在化したと言え、歌詞とは別に、印象的なフレーズを1節添える手法も、文学的な印象を強めていたのでは。

 

意外だったのは、瑞々しさすら感じさせるVo.コウさんのハイトーンヴォイス。

偏見や先入観ではあるのだが、アングラ色の強いバンドは、おどろおどろしさ、気持ち悪さを武器にする歌い手が多いイメージ。

一方で彼の場合、歯切れ良く硬派に歌い上げるスタイルで、ギャップを与えていました。

なんとなく、Janne Da Arcを彷彿とさせる場面もあったりして、ポテンシャルを感じずにはいられません。

 

あえて癖をつける構成も、なかなかに強か。

1曲目にSEを置いて、「憂囚-居場所のない少女-」で勢いに乗るかと思いきや、続く「踏切」がまさかのインストナンバー。

ボリュームが多いアルバムの場合、複数曲がインスト曲があることも珍しくはありませんが、たった3曲のSEを、1曲目、3曲目、10曲目に据えるバランスの悪さが、アルバムを聴き終わるまで、また何か仕掛けてくるのでは、というドキドキを生んでいますね。

ラストの「116号室のキミ」も、良い意味でラスト感が薄く、最後の最後まで先が読めない作品だったなと。

 

楽曲ひとつひとつを取って見れば優等生的なダークバンド。

ただし、アルバムで聴くと変な癖、変なこだわりに溢れた1枚です。