deep under/ヒッチコック
1. delete
2. DEEP UNDER
3. 恋のチャンス
4. タヒ
5. メサイア
6. 涙終哥
深爪激痛レコードに所属するヒッチコックが2023年末にリリースした2ndミニアルバム。
12ヵ月連続での配信シングルに、2枚のミニアルバム。
ハイペースで楽曲を送り込んできた2023年のヒッチコック。
その中で音楽性やテーマについては振れ幅を作っている印象ではありましたが、ミニアルバムとしてパッケージされた本作においては、あえて風呂敷を広げず、絞り込んだコンセプトで勝負しています。
まず、サウンド面については、ゼロ年代~イチゼロ年代の王道を意識。
同期の音を装飾として使いつつ、ヘヴィーでラウドな音像を展開。
そこに重ねるメロディ部分は、更に時代を巻き戻す"古き良き"も踏襲していて、ヴィジュアル系リスナーには全世代的に刺さりそうな構図に仕上げています。
作曲者は、Vo.八咫烏-karasu-さんと、Gt.光-kou-さんが半分ずつ担当。
キャッチーさやメロディアス性を活かして、ヴィジュアル系のど真ん中を突き進む光-kou-さんと、癖を強めて捻くれたナンバーを持ってきているようで、実は足りない要素をしっかりと補うクレバーさを見せる八咫烏-karasu-さんのバランスが絶妙で、作曲者が異なるはずの「delete」のキーボード音を「DEEP UNDER」でも用いるなど、アレンジの工夫も効いていました。
そして、歌詞のモチーフ。
SEである「delete」と、極端な暴れ曲「タヒ」を除けば、いずれも偏執的な"愛"がテーマになっています。
象徴的なのが「恋のチャンス」。
世界観がズレているようなタイトルを見て驚き、吹っ切れたとも言える歌詞を見て再び驚いたリスナーもいるでしょうが、まさか彼らがポップ路線に変更などするはずもなく。
ストレートな愛情表現をシャウトで叫び倒したと思ったら、ハッピーエンドとは遠いところに着地していくヒッチコック節。
変拍子やテンポチェンジで変態性を示す手法も見事で、この歌詞にFatimaの片鱗を見ることになろうとは。
その他の楽曲も含めて、素直なラブソングとは似ても似つかない空気に染め上げてしまった結果、対極の感情である"死ね"のフレーズだけで構成された「タヒ」が、むしろ馴染んでいる気さえしてくるから面白いですね。
なんだかんだでキラーチューンとなるのは、配信シングルとしてリリースされていた「DEEP UNDER」や、ラストスパートのきっかけとなる疾走系メロディアスナンバー「メサイア」なのでしょう。
一方で、強烈に耳に残って離れないのが「恋のチャンス」と「タヒ」。
それらを総括してアンコールのような余韻を残す「涙終哥」が佳曲であるのも疑いようがなく、結局、どれも外せないという結論に落ち着く1枚。
2024年の快進撃にも期待できそうです。