INSTINCT/RENAME
1. erode
2. Loose
3. GROSS
4. Fula
5. void
6. 犬の詩
7. elegy elegy
8. Stigma
9. anemone
10. miserable
2020年にリリースされたRENAMEのフルアルバム。
メンバーは、MIRAGEのVo.AKIRAさん、ex-EzeːquL、unknown:REのGt.中西信剛さん、Ba.ka-noさんの3人。
レコーディングのドラムは、後にMIRAGEに加入することになるYOMIさんが参加しており、Matina色の強い編成と言えるのかもしれません。
しかしながら、当時のMatina系のコテコテサウンドとは一線を画し、アダルトな雰囲気を纏った独自性の高い音像で勝負しているのがRENAMEなのでしょう。
懐かしい、と言っても当時の実績をなぞってのそれではなく、ムード歌謡や80年代ポップスのお洒落なレトロさを現代に昇華したことによるノスタルジー。
ディスコ感のあるダンサブルな「犬の詩」や、ジャジーなライブ感を持った「elegy elegy」など、一言にレトロといってもアプローチは様々だな、と唸らせる展開が味わい深いのです。
ラテン調の「anemone」なんて、よくこれをチャラついた感じではなく、シックな世界観に落とし込んだな、と際立ったセンスの良さに驚かされましたよ。
そんな彼らの大人のロックに、洗練された清涼感を加えているのが、hide with Spread Beaverでの活動やGLAYのサポート等でも名を馳せたDaijiro "DIE" Nozawaさんによるピアノの音色。
歌謡要素が強いため、必然的にメロディへの意識は高まるのですが、鍵盤が入ることで、歌のない部分でも歌心が生まれており、結果的に旋律の幅を広げる役割も担っていました。
ラスト「miserable」におけるオマージュ的なフレーズを畳み掛ける流れも然ることなら、要所要所でとても効いていたな、と。
総合的には翳りの中にある作品。
世界観重視のミディアムナンバー「erode」でスタートしていることからもわかるとおり、表面的な激しさに頼ることなく歌モノを中心に組み立てているとはいえ、キャッチーというより、マニアックという表現がしっくりくるのでは。
歌謡メロディの背後に、シューゲイザー気質の強いサウンドが漂っているなど、一筋縄ではいかないアンダーグラウンドの矜持も詰まっており、爆発力は持たずとも、じわじわと侵食。
隠れた名盤と言える1枚です。