「ねぇ、雨が上がったよ。」 / 杏太 | 安眠妨害水族館

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「ねぇ、雨が上がったよ。」/杏太

 

1. クライフォーザムーン

2. 空花乱堕

3. エフェメラル

4. いつか晴れた日の為に

5. 歪んだ世界

 

 慎一郎&杏太、ホタル、コウモリ達の夜会等で活動しているギタリスト・杏太さんの、ソロとしては初となるミニアルバム。

 

本作は、8月からライブ会場での販売を予定していたものの、コロナ禍によって延期が決定。

それを受けて、通販での先行リリースとなりました。

これまで、チェキの特典としてデモCDRは発表されていましたが、正式音源のリリースははじめて。

歌詞は楽曲は当然として、ジャケットの写真やイラストに至るまで、いたるところに杏太さんらしさがうかがえますね。

帯のコメントを戦友である慎一郎さんが担当しているので、思わずニヤリとしてしまいます。

 

さて、音楽性は弾き語りをベースとしたシンプルなスタイル。

空花乱堕」など、同期を使ってスペーシーな雰囲気に仕立てた楽曲もありますが、代表曲となっている「クライフォーザムーン」をはじめ、アコースティックギターで再現することを前提にした楽曲が多いと言えるでしょう。

その意味では、慎一郎&杏太やコウモリ達の夜会と同じようなアプローチ。

ともすれば、新鮮味は薄くなっていたのかもしれません。

 

しかしながら、杏太さんの素朴でひたむきな歌声は、その他のプロジェクトとは違いを生み出しており、表裏がなさそうなまっすぐさが胸に刺さるのですよ。

エフェメラル」はインストナンバーですが、ギターだけでなくフルートにも挑戦。

常に新しいことを、という彼のポリシーが強く反映されており、いつか晴れた日の為に」でも、語りのようなパートを取り入れてギミックを強めています。

ホタルの楽曲に多く見られる歌謡要素は少ないものの、フレーズの紡ぎ方やコード感に、これは彼の楽曲だなと思い知らされる。

最初の「クライフォーザムーン」から、ラストの「歪んだ世界」まで、メッセージ性の強い佳曲揃いでした。

 

なお、裏ジャケットには、自作の短編小説、「小さな風使い」を掲載。

絵本の原作のようなハートフルなファンタジーで、こういう引き出しも持っているのか、と感心してしまう。

音楽だけに留まらない、ソロアーティスト・杏太の総合パッケージとなる1枚です。