俄雨 / 雨や雨 | 安眠妨害水族館

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俄雨/雨や雨


1.  ぴあとぅり
2.  リトルスカイハイツ
3.  殉ずるとは

ex-MoranのVo.Hitomiさんが、アーバンギャルドのピアニスト、おおくぼけいさんと結成した雨や雨。
読み方は"あめやさめ"とのことです。

浜離宮朝日ホールにて開催されたファーストコンサート、「枯渇した胸に降るものは」。
本作は、その会場で限定販売された3曲入りシングル。
作詞をHitomiさん、作曲をけいさんが担当しています。

収録されているのは、ピアノと声のみ。
"ドラマティックユニット"と銘打っているだけあって、表現力に特化した形でしょうか。
ときに柔らかく、ときに荘厳に響くピアノの音色は、それだけで表情を持っているのだけれど、そこに重なるのが、既に表現者として完成されているHitomiさんの歌声。
これはたまらないだろ、と。

「ぴあとぅり」は、弾んだピアノに、ほんのりダークなメロディが乗った楽曲。
歌詞がHitomi節全開なので、ニヤリとしてしまいます。
大人びた雰囲気に仕上げ、キャッチーさもある。
バンドサウンドで再現しても映えそうな楽曲ですが、アコースティックなアレンジだと、聴かせることにも重きが置かれるから面白いですね。

続く「リトルスカイハイツ」は、しっとり歌い上げるバラード。
美しいフレーズが、切なく、優しく、空間に溶け込んでいくようで、これぞ、ピアノをメインに据える醍醐味。
ベタすぎるきらいもありますが、この編成でやるからには、1曲ぐらい王道があっても良いじゃない。
力強く声を振り絞った後に、消え入りそうなファルセットで同じメロディを繰り返すラストシーンは鳥肌モノ。
実力があるからこそ響くナンバーです。

「殉ずるとは」は、まさにドラマティック。
なんというか、ピアノのみでの伴奏であることを忘れそうになるのですよ。
緩急をつけて、盛り上げるところを盛り上げる。
最高潮に達したと思ったら、突然に静けさが訪れる。
ひとつの楽器で、ここまでメリハリをつけられるものなのだな。
メロディもとっつきやすく、これは名曲。

シーンを見渡せば、相対的に異色のユニットとなる彼ら。
情報量の多い楽曲が飽和している昨今、このシンプルさはとても新鮮に感じます。
ただし、ピアノと歌という普遍的なスタイルには、一朝一夕ではモノにできない奥深さもあるわけで。
そのインパクトは、出オチ的に時間が経てば薄れてしまうものではなく、熟成させることでより味わい深くなっていく性質のものなのである。
恒常的に続いていくことを想定しているのかはわかりませんが、更なる深化を見届けたい気持ちになりました。
限定販売となったことが、もったいないと思える1枚。