悪魔構築論 / THE.GOLDEN SPIDER | 安眠妨害水族館

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悪魔構築論/THE.GOLDEN SPIDER

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1. 悪魔思想開花
2. フェインティングゴート
3. くらやみのこども
4. リブロイド
5. グリムズナイトメア
6. 幼児回帰
7. 日曜の朝
8. 暗い日曜日

電脳オヴラアトのメンバーを中心に2005年に結成されたTHE.GOLDEN SPIDER。
本作は、2008年にリリースされたコンセプト型マキシシングルです。

2009年に解散に至る彼らですが、音楽的には終盤に熟成されたイメージ。
当初は、電脳オヴラアトからの流れもあって、哀愁歌謡をベースとしたロック色の強い音楽性でしたが、この頃は、そこからひとつ進化してTHE.GOLDEN SPIDER流の耽美系サウンドを追及していたように思います。
「悪魔進化科学。」をテーマに据えた本作は、その集大成。
コンセプトを絞っただけにダークな世界観に特化した、濃厚な作品に仕上がりました。

シングルと言いつつ、8トラックを収録。
キラーチューンだけでなく、雰囲気作りの楽曲も織り込んで、流れにメリハリをつけていくアプローチとなっており、それが本作の肝なのではないかと。

1曲目の「悪魔思想開花」が象徴的で、インダストリアルな匂いもあるゴシックサウンド。
初期のTHE.GOLDEN SPIDERしか知らないリスナーであれば、歌謡メロディがまったくないことに驚くことでしょう。
シングルとして入れるには勇気の要る音楽性なのだが、トラックを増やす割り切りにより、こんな導入的なナンバーの挿入が可能になったのである。

また、ウィスパーボイスで途切れ途切れに囁き続ける「くらやみのこども」にしても、幼児がおもちゃの音楽に合わせて「ロンドン橋」を歌い続けるだけという「幼児回帰」にしても、背筋をゾッとさせる演出めいたアクセントとして効いています。
最初は、これらが流れを止めてしまっているなとも感じていたのですが、あくまで本作はシングルであり、インパクトも求めたいところ。
アクセント曲の役割として、耽美さが途切れないように世界観を維持しつつ、キラーチューンとして用意されている楽曲を際立たせるために、あえて流れを壊しているとも考えられるのですよ。

「フェインティングゴート」は、彼ららしいレトロなサウンドも顔を出して、相応にとっつきやすさを高めており、再録された「リブロイド」、「グリムズナイトメア」は、暗さが目立つ楽曲群の中に激しさをもたらす。
「日曜の朝」はアングラなミディアムナンバーとして印象に残り、この4曲を鮮烈にするための演出が、それ以外の4曲と捉えると、また味わいが変わってくるのではないでしょうか。

ちなみに、「暗い日曜日」は、聴いた人間が自殺すると言われている呪われた楽曲のカヴァー。
レコードで聴いているようにノイズ音を加え、低音質に加工しているあたりにこだわりが覗えます。
それ以外にも、ゴシック、アングラ、ホラー的なギミックを歌詞カードやサウンドに取り込んでいるので、しっかり集中して聴くことで楽しめる発見もありそう。

一度聴いてピンと来なくても、何度も繰り返していくうちに、ひとつ、ひとつと解釈の選択肢が増えていくので、いつの間にかハマり込んでしまう危険性あり。
ぜひとも、好きな曲だけでなく、本作に収録された曲順で聴いていただきたいものです。